研究課題/領域番号 |
23602009
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
久保 均 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (00325292)
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研究分担者 |
原田 雅史 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (20228654)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 分子イメージング / 無麻酔測定 / マウス |
研究概要 |
本年度は,マウスの脳を無麻酔測定可能なアタッチメントとそれを固定するデバイスの開発を行うと共に,小動物用PET/CT装置を用いて麻酔時と無麻酔時の18F-FDGの体内動態を評価した.マウス頭部に装着する固定用アタッチメントは,光イメージング測定・MRI測定およびPET/CT測定のいずれにも対応できるようにするため,当初は頭頂部が開口している形状で開発を行ったが,この形状では使用する接着剤の強度が不足することがわかったために,板状のものに形状を変更した.これにより頭蓋骨と幅広く接触することができ,接着強度が向上して安定的に固定されることが確認された.また,接着後の長期飼育においてもアタッチメントの変性等は生じず,他のモダリティでも十分に使用できると考えられた. アタッチメントを装着したマウスを固定するデバイスは,50mLコニカルチューブを形成することにより作成した.X線吸収の少ないプラスチック製のねじで固定することで,長時間の測定に耐えうるシステムの構築に成功したが,マウスの体重が35g程度を越えると内部空間が狭隘になってしまうことが判明し,特に体軸方向の長さが足りないことがわかった.長期に飼育して経時的な変化を評価しなければならない場合は,より長いデバイスを用意しなければならないことが判明した. 開発したデバイスを用いて麻酔下および無麻酔下の18F-FDGの体内動態を,小動物用PET/CT装置を用いて評価した.無麻酔状態における脳のSUVmeanは,麻酔下の約70%であった.また,吸収補正を行ったものに比して補正を行わない場合は80%程度の値となったため,デバイスの影響と考えられる吸収の補正は必須と考えられた.しかし,散乱補正を加えても有意なSUV値上昇は見られず,散乱補正は必要ないことが示唆された.これらの成果は,他のモダリティに応用できるものであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の最大の目標である無麻酔測定用アタッチメントおよびその固定用デバイスの開発は成功し,第一段階であるPET/CT測定を行いその定量結果を出すことはできた.しかし,当初の予定であるMRI測定や光イメージング測定を行うことはできなかった.これは,アタッチメント開発に想定以上の時間がかかったことと,学内において同一研究者がマルチモダリティの装置を使用することの想定がなかったために,その基準および環境作りを行うことにも時間がかかったためである.しかし,これらの問題点は現時点で概ね解消されており,次年度は当初の予定に従った研究活動ができるものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の開発したアタッチメントおよび固定用デバイスを用い,光イメージング測定・MRI測定およびPET/CT測定を行うことにより,開発したアタッチメント等のマルチモダリティ対応が可能かどうかを検証することを第一の目標とする.その上で,マルチモダリティ測定における開発したアタッチメントやデバイスの問題点を洗い出し,無麻酔マルチモダリティ測定に最適なアタッチメント開発を継続する. また,無麻酔測定の最も意味のあるところは生体機能の定量評価であるため,開発したデバイスでどのような機能をどの程度の精度で測定可能かを検証する.予定しているのは,1)ルシフェラーゼ遺伝子を発現させた腫瘍細胞をマウスの脳に移植し,光イメージング測定・MRIおよびMRS測定,およびPET/CT測定を用いた移植腫瘍の機能評価を行うとともに,それらの関連性を調べ移植腫瘍評価における無麻酔測定の意義を確認すること,および2)覚醒下におけるfMRIやFDG測定による各種刺激に対する脳機能の評価を行うこと,である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,無麻酔測定を行うために必要なマウス脳用アタッチメントおよびその固定用デバイスの開発を行った.アタッチメントのマウス頭部への装着には手術が必要であるが,アタッチメントの形状を試行錯誤しながら開発を進めていたために,手術に必要な小動物用手術器具を年度内に確定することができなかった.その為,一部の手術に必要な器具等の発注が遅れ,次年度への繰り越しとなった.そこで,次年度では開発したアタッチメントを装着する際に必要な手術器具等を揃え,実際にアタッチメント装着の手術を行うのに使用する.
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