研究課題
本年度は,作成したマルチモーダル対応マウス無麻酔固定装置を用いて,マウスの脳を対象として蛍光イメージング(BLI)および陽電子放出断層撮影(PET)を吸入麻酔下および無麻酔下で行い,脳におけるグルコース類似物質の取り込みの違いを測定した.マウスは雄のICR 5匹を用い,5週齢時に無麻酔固定装置の取り付け手術を施行した.6週齢以降でBLIおよびPET測定を麻酔および無麻酔で行い,BLI同士およびPET同士の測定間隔は3日および2日以上設けた.最低6時間の絶食後,BLIではXenoLight Rediject 2-DG-750 probeを60-80μL,PETでは18F-FDGを約10MBq尾静脈より静脈投与し,BLIは30, 60および90分後,PETでは50分後から10分間測定した.吸入麻酔にはイソフルランを使用した.使用装置は,BLIにはCaliper社製IVIS imaging system, PETにはSiemens社製Inveon PET/SPECT/CTを用いた.画像処理および解析処理はLiving ImageおよびIAW viewerを用いて行い,大脳および小脳における2DGおよびFDGの蓄積量を投与量との比として求めた.PETでは麻酔時に比して非麻酔時は大脳で約78%,小脳で85%の集積となった.BLIにおいては大脳で約35%,小脳で約40%にまで集積が低下した.これらの結果は,麻酔薬が脳における糖代謝に非常に大きな影響を与え,イメージングデバイスによってその評価に大きな差があることが示された.本研究により,動物実験においては麻酔薬の影響が無視できないほど大きい事が示唆された.これは,動態や薬効評価を行う際に麻酔薬の影響を考慮する必要があることを示すと共に,ヒト投与に近い状態を創り出すためには無麻酔測定システムが必須であることを示唆するものであった.
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The Journal of Medical Investigation
巻: Vol. 61 No. 1, 2 ページ: 46-52