研究課題/領域番号 |
23602015
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
岩本 信之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究副主幹 (70391307)
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研究分担者 |
岩本 修 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究副主幹 (80370360)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 核医学 / 核データ評価 / 放射性同位元素 / RI生成断面積 / RI生成量 / 画像診断 |
研究概要 |
核医学に利用可能な放射性同位元素(RI)のリストアップと簡易核反応断面積計算によるRI生成量の算出を行った。入射エネルギーが10~20MeVの高速中性子とRI製造の原料となり得る安定標的核との核反応で製造可能な半減期が3時間~1週間の範囲にあるRIを原子核構造及び放射性崩壊の最新データベースからリストアップした。リストアップしたRIを画像診断用としてPETで有用な陽電子放出核、SPECT等で有用なガンマ線放出核、また治療用として細胞を傷害する能力の高いベータ線放出核に分類し、その選別に関して以下の条件を課した。陽電子放出核についてはガンマ線強度を10%未満とした。ガンマ線放出核については放出されるガンマ線のエネルギー範囲を30keV~1.3MeVとし、単ガンマ線放出核種でない場合には1崩壊あたりに放出されるガンマ線の強度が50%以上の核種を選別した。ベータ線放出核についてはガンマ線強度を10%未満とし、ベータ線の最大エネルギーには上限を設けなかった。リストアップした核医学利用が期待されるRIの生成量評価のために、核反応計算コードCCONEのデフォルトパラメータによる簡易計算を実施し、RI生成断面積を導出した。この断面積を用いて天然元素及び濃縮同位体の場合におけるRI生成量を算出した。本計算では標的核への中性子照射時間を製造しようとするRIの半減期の2倍もしくは1週間のいずれか短い方に設定し、照射後から検査開始までの期間を24時間と仮定した場合に天然元素1グラムから生成される1ギガベクレルを超える放射能をもつRIとして65核種を選別した。なお、核医学診療用として不適当な副次的RI生成の観点から原料の絞り込みも実施した。最終的にリストアップした核種は陽電子放出核12種(生成反応数17)、ガンマ線放出核45種(生成反応数88)、ベータ線放出核14種(生成反応数43)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
リストアップしたRIに対する生成量の概算評価を次年度まで継続して実施する予定であったが、本年度中にリストアップした65核種すべてのRIに対する生成断面積を核反応計算コードCCONEにより導出し、高い生成放射能をもつRIの選別を終了した。また、ガンマ線放出核のエネルギー範囲及びガンマ線強度を当初予定していた70keV及び90%以上から30keV及び50%以上にそれぞれ下げることでより多くのRIについて核医学利用の可能性を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
リストアップした放射性同位元素(RI)に対する生成量の概算から標的核(天然元素及び濃縮同位体)1グラム当たり1ギガベクレル以上の放射能が期待できるRIに対して、高速中性子を利用した原子核実験による反応断面積測定データと核反応計算コードCCONEで計算した断面積との比較・検討を実施する。これにより基底状態から励起した核異性体(アイソマー)状態の生成も考慮した最も妥当な断面積を導出する。このようにして得た断面積データを基に、核医学診療に利用可能なRIについて信頼性の高い生成放射能を算出する。また、副次的に生成される不要なRIについても生成放射能を算出することにより、リストアップしたRIの核医学診療への有用性を検証する。以上、交付申請書に記載の研究実施計画通りに研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用予定の研究費は本年度に予定した物品の購入及び旅費等に充てた経費の残額であり、これによる翌年度以降の研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題は生じない。次年度は大容量の数値データを保存するために損失リスク低減機能の付いたバックアップ用装置を購入する。また、研究代表者及び分担者間で数値データを共有するためのハードディスクを購入する。リストアップしたRIの核医学利用調査のために、核医学関係の図書を購入し、検討資料とする。研究成果の発表並びに関連研究者との議論のために、核医学関連の学会及び研究会へ参加するための旅費を計上する。
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