研究課題/領域番号 |
23602015
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
岩本 信之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究副主幹 (70391307)
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研究分担者 |
岩本 修 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究副主幹 (80370360)
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キーワード | 核医学 / 核データ評価 / 放射性同位元素 / RI生成断面積 / 放射能 / 画像診断 |
研究概要 |
昨年度、放射性同位元素(RI)に対する生成量の概算から標的核1グラム当たり1メガベクレル以上の放射能が期待できるRIをリストアップした。本年度はそれらの生成断面積について、原子核実験による測定データと核反応計算コードCCONEの計算結果を比較・検討した。これにより陽電子放出核8種(生成反応数12)、ガンマ線放出核29種(生成反応数50)及びベータ線放出核13種(生成反応数38)に対して核異性体の生成も考慮した最も妥当な断面積を導出した。 RI製造体系を模擬してRI生成量の計算を行うために、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを使用した。このコードに評価した生成断面積と核構造データベースであるENSDFから採用した最新の崩壊データを組み込んだ。模擬体系として、中性子源から単色の一様な中性子ビームが試料へ入射すると仮定した。標的試料は100%濃縮の同位体を想定し、形状は直径4cm、厚さ2cmの円筒形とした。その他の条件は昨年度と同様に設定した。この計算によって重複を除いた46種のRIと副次的に生成される不要なRIに対して信頼性の高い生成放射能が得られ、核医学診療用RIとしての有用性が検証できた。なお、中性子源のスペクトル、試料の形状及び試料の配置等を自由に変更できるので、今後それらについても検討する予定である。 核反応断面積は中性子エネルギーにより大きく変化するので、生成放射能の中性子エネルギー依存性を調べるために、断面積評価の終了した93種(重複を除く)の核反応に対して10、14及び18メガ電子ボルトにおける生成放射能を計算した。これにより不要なRIの生成を抑え、効率良く核医学用RIを生成できる最適な中性子エネルギーについて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度リストアップしたRIの70%にあたる46核種に対し、これらを生成する93種の核反応について、原子核実験による測定データと核反応計算コードCCONEの計算結果を比較・検討することにより、信頼性の高いRI生成断面積を導出した。 これらの評価済RI生成断面積と最新の崩壊データを組み込んだ粒子・重イオン輸送計算コードPHITSにより、目的のRIと副次的に生成される不要なRIについて生成放射能を計算し、その放射能の割合からリストアップしたRIの核医学診療への有用性を検証した。 また、次年度に実施予定であった生成放射能の中性子エネルギー依存性についても平行して検討した。
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今後の研究の推進方策 |
リストアップしたRIのうち、残りのRIに対する生成断面積の評価並びに生成放射能の計算を実施する。 さらに、原料として天然元素及び同位体濃縮原料の双方の利用を想定し、RIの生成量を算出する。この結果を踏まえて、目的外の不要なRIの生成量を抑え、良質なRIを生成するための標的原料の条件について検討する。これに加えて、使用済み核燃料の利用についても調べ、使用済み核燃料の有効利用の可能性も検討する。 核反応断面積には入射中性子エネルギー依存性があるので、生成放射能の中性子エネルギー依存性を調べる事により、不要なRI生成を抑え、効率良く核医学用RIを生成できる最適な中性子エネルギーを探る。また、現在利用されている核医学用RIの代替となり得るRIや新規のRIについての製造可能性を明らかにする。得られた結果を取りまとめ、成果発表を行う。 以上、交付申請書に記載の研究実施計画通りに研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用予定の研究費は本年度に予定した物品の購入及び旅費等に充てた経費の残額であり、これによる翌年度の研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題は生じない。 研究代表者及び分担者間で数値データを共有するために外付けハードディスクを利用している。次年度はこれを増強するために、ハードディスクを購入する。算出した生成放射能から有用と期待されるRIの核医学利用調査のために核医学関係の図書を購入し、検討資料とする。研究成果の発表及びRI製造について最先端の状況を知るために、核医学関連の学会や研究会へ参加するための旅費を計上する。
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