今年度は、研究計画書に基づき、論文作成のためのデータ解析を進め、論文作成を行うと共に、実験動物の膵組織を使った免疫組織化学実験を行った。 前年度に発表した論文では、ソマトスタチンアナログのひとつであるoctreotideをGa-68で標識したPETプローブを用いてラットでPET実験を行い、このPETプローブがラットの膵臓に高く集積し、その結合が膵臓のソマトスタチン受容体に特異的に結合していること、またStreptozotocin誘発糖尿病ラットでは膵集積が有意に減少することから、このPETプローブが膵β細胞量の測定に有用であることを報告していた。 今年度は、ヒト膵β細胞量の測定に有用となるPETプローブの探索のため、放射性ソマトスタチンの比較検討を行った実験のデータ解析を行い、論文の作成を行った。放射性ソマトスタチンの候補物質の選定は以下の2点を考慮して行った。ひとつは、ヒト膵内分泌細胞に発現しているソマトスタチン受容体のサブタイプである。また、もうひとつは、放射性ソマトスタチンアナログにおいて、放射性核種で標識するために結合させるキレーターと、放射性核種をモディファイした場合に、ソマトスタチン受容体との親和性の変化である。これらを考慮した結果3つの候補物質を見つけ、PET実験による膵集積を比較したところ、68Ga-DOTA-Tyr3-octreotateが最も高く集積することが明らかとなった。また、膵組織を使った免疫染色では、PETプローブの膵集積と実際の膵β細胞量との相関を明らかにすることを目的に、染色方法や膵β細胞量の測定法の検討を行った。
|