研究課題/領域番号 |
23602017
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
稲玉 直子 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 主任研究員 (10415408)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | PET検出器 / DOI検出器 / シンチレータ / レーザー加工 / MPPC |
研究概要 |
本研究は、高分解能を保ちつつ一方向に長い形状にすることができるPET検出器の開発である。小型の半導体受光素子を用いることにより検出器全体もコンパクトになるため、例えば乳がん検診に用いられるマンモPETで乳房間に挿入するなどの応用も期待できる。検出器は、放射線を検出するシンチレータ部が細かな立方体の3次元配列に分割されていて、すべての分割結晶の識別を可能にしたことで3次元すべてに対し同等の高分解能を達成できる。研究の初年度である本年度は、近年レーザー加工によりシンチレータを3次元的に分割する技術が開発されたため、上記の検出器の開発のための基礎実験として、一塊のシンチレータをレーザー加工で立方体に分割した結晶ブロックを用いた検出器の性能を評価した。結果は今まで用いていた細かな立方体結晶素子を3次元配列した結晶ブロックと比較した。分割結晶のサイズを 3 mm とした。レーザー加工の結晶ブロックは、結晶素子配列と同等で十分な結晶識別能を示し、エネルギー分解能はやや向上した。また、結晶ブロック内部のシンチレーション光の広がり方に違いがあり、レーザー加工では放射線を検出した分割結晶で発生した光がその近くに広がるのに対し、結晶素子配列ではその分割結晶を含むそれぞれ3方向にのびる結晶列のみに直線的に伝わる傾向があることが分かった。光の広がりが発生個所近くに分布するのは結晶識別には有利な条件であるが、光を遠くに伝える場合は光が広がらずに直線的に伝わる方が減衰が少ない可能性も考えられる。なお、多くの利点をもつレーザー加工技術は、本検出器のようにシンチレータ内部に反射材を含まないという独特の構造をもつ検出器のみ用いることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発する検出器の最終形態は、シンチレータにレーザー加工を施したものを積み上げるため、レーザー加工と結晶素子配列という2つの条件が混在したものとなる。初年度にそれぞれの特徴を調べまとめることができたため、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度末までに、板状シンチレータの納品を済ませ、そこにレーザー加工を施すところまで進めたので、次年度に本年度の実験結果を踏まえて実際に結晶ブロックを組み立て、検出器としての性能評価を行い、シンチレーション光の広がりについて解析する。解析結果を踏まえて、受光素子の配置やライトガイドにさらに工夫の余地があるか再考する。
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次年度の研究費の使用計画 |
検出器性能向上を目的とした比較実験のため、異なる検出器パラメータでの検出器を新たに準備する。板状のシンチレータ一式、ライトガイド、受光素子などである。それら新規購入品のサイズや個数は、本年度に納品された検出器での実験結果を踏まえて最終調整する。また、板状シンチレータを用いた検出器についての学会発表を積極的に行うこととし、研究費をそのための旅費、参加費に使用する。
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