研究課題
本研究は、近年の小型受光素子の普及により実現可能となった高性能PET検出器のさらなる性能向上を目的としたものであり、本年度が最終となる。通常PET検出器では、放射線との干渉、密な検出器配置という点から受光素子はシンチレータ部の底面のみに設置され、シンチレーション光の広がりを反射材挿入で底面方向だけに導く。本検出器で用いる小型受光素子は全面への設置が可能であり、広がりの制限による光の減衰が減ることで安定した信号が得られ、高性能を達成できた。本検出器に対し、初年度に、さらなる高感度化のためシンチレータ部を一方向に延長させ大面積にしても3次元ともに2mmの高い放射線検出位置分解能を保てること、また、シンチレータ部に3次元的なレーザー加工を施すことで性能が向上することを確認した。2年目は、量産に耐えうるよう、レーザー加工が2次元で済むため歩留まりが高い板状シンチレータの使用を発案し、同様に2mmの分解能を得られることを確認した。本年度は、板状シンチレータで1mmの分解能が得られるか試作器で評価した。3次元それぞれ分解能が1/2になるため、全体では1/6の細かさでの検出位置識別が求められる。評価の結果、シンチレータ部表面の一部で分解能の劣化が見られたが、内部では1mmの高分解能が得られた。この結果は、春の国際学会で口頭発表に選出された。また、実験では条件を変えた測定を繰り返し行うためシンチレータを接着後に再び剥がす必要があるが、薄い板状シンチレータは剥がす際に割れる心配があった。接着剤の代用となる光学グリースはレーザー加工部にしみ込む、重ねたシンチレータが滑るなどの点で本研究に不向きであった。その解決のため、光学接着剤(シリコンゴム)を極薄のシート状にして乾かしたものを使用することを発案した。本光学シートは検出器開発全般に広く使用可能で、この成果は秋の国際学会で口頭発表に選出された。
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IEEE transactions on nuclear science
巻: vol. 61, No. 1 ページ: 53~59
10.1109/TNS.2013.2293599