研究課題/領域番号 |
23602018
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
蓑原 伸一 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (60239332)
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研究分担者 |
山本 直敬 独立行政法人放射線医学総合研究所, その他部局等, その他 (90300912)
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キーワード | 仮想内視鏡 / 治療計画線量分布 / 重粒子線治療 / 肺門近接型肺がん |
研究概要 |
本年度は、放射線医学総合研究所で炭素線治療を行った肺がん患者のうち、14例の肺門近接型肺がんに対して、本システムの臨床的な有効性について評価をおこなった。治療計画用CT画像から再構成した仮想内視鏡の気管支内面に炭素線治療計画線量分布をボリュームレンダリング法で重畳表示し、実際の気管支鏡画像で観察されら治療前後の画像と比較し、治療計画の妥当性やその精度の評価が可能であるかを試みた。従来の直交断面の線量分布表示では、内視鏡で観察される腫瘍辺縁や気管支分岐近傍の線量分布の評価が難しかったが、本手法ではこれらが容易に判断できた。また照射後に気管支鏡で直接的に観察された気管支の閉塞及び正常組織の温存等の反応から、治療計画の妥当性を概ね確認できることがわかった。これらの臨床例での評価については、第25回放射線腫瘍学会学術大会で発表した。 一方、上記の評価の過程で、治療計画装置上で入力した標的(CTV,GTV)辺縁が、仮想内視鏡上でどの部分に該当するかを見極めることが出来ないため、もし線量分布の修正をおこないたいとしても、治療計画の標的入力の修正にフィードバックするのが難しいことが分かった。そこで治療計画装置が有する標的の3次元形状情報(RTOG形式データ)を、仮想内視鏡ソフトに入力可能なデータ形式に変換するソフトの作成をおこなった。標的輪郭と線量分布を仮想内視鏡上に同時には表示できないが、それぞれの画像を独立に生成し比較することで評価を支援する。この機能の臨床的な有効性の評価は25年度におこなう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書で24年度までの目標とした臨床10例以上での本システムの評価については、これまで14例で行うことができ、その有効性・妥当性を示すことが出来、順調に進んでいる。一方、仮想内視鏡線量分布での評価に基づいて、治療計画装置での標的輪郭修正にフィードバックすることについては、今年度のソフト開発で機能的には出来そうな見通しを得ているが、仮想内視鏡画像生成・表示が商用装置に依存しているので、入力データの構造に制限等が有り、ルーチン的に臨床的評価を行うには操作性が悪いという問題がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの臨床例での評価から、本件の仮想内視鏡線量分布表システムが、治療後に治療計画の妥当性を検証する上では有効であることを示すことが出来たので、これの成果をまとめ国際会議で発表するとともに国際誌に論文として投稿する。 一方、治療前の評価から、照射領域を修正するような機能までは検証できておらず、これらをシミュレーション的に検討する。また本表示システムは、肺がんだけでなく、食道がんや前立腺がんにおける直腸への影響など内視鏡で観察可能な管空臓器に対する線量分布の評価にも応用を拡張出来るはずであり、これらへの臨床利用の検討を進める。その際、座標系・データ形式に対応して、平成23年度-24年度に製作したソフトの一部を修正する。
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次年度の研究費の使用計画 |
臨床例での評価を踏まえた本システムの有効性について、国際会議での成果発表、及び成果の国際誌への投稿をおこなう。 また平成23年度-24年度に製作したソフト機能の一部修正をおこなう。
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