研究課題/領域番号 |
23603004
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
細谷 浩史 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90183102)
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キーワード | 共生 / 遊離糖 / ミドリゾウリムシ / 共生藻 |
研究概要 |
今年度までに、ミドリゾウリムシに含まれる遊離糖の濃度を増加させる事ができる培養条件を明らかにした。また、各種クローン化共生藻(ミドリゾウリムシから取り出し、クローン化した共生藻)それぞれにおける遊離糖の生産能力を調べ、個々のクローン化共生藻を、共生藻除去ミドリゾウリムシに再共生させ、再共生能力の有無を定量した。その結果、クローン化共生藻の糖生産能力と、それらの共生藻のミドリゾウリムシへの再共生能力の間に直接的な関係は認められないことが明らかになった。 また、ミドリゾウリムシ体内の共生藻密度は、一匹あたり400個程度の共生藻が共生している事実を元に計算すると、10の10乗個共生藻/mlの高密度になる。この密度での共生藻の糖生産能力を液体培養系でミミックさせるために、クローン化共生藻の密度を様々に変化させた(10の3乗個~10の8乗個共生藻/ml)共生藻液体培養系を作製し、まずその増殖速度の検討を行った。その結果、10の7乗以上の密度では、共生藻は液体培養を開始しても増殖しなかった。また、ミドリゾウリムシ体内における共生藻の状況を考慮し、原形質流動を行っている間期の状態を再現させるため、共生藻の培養を振とう条件下で行った。その場合、静置条件下にくらべ振とう条件下で共生藻の増殖は抑制される傾向にあることが明らかになった。共生藻密度を10の9乗以上に高密度にさせ液体培養を行うことは、現在の研究室の培養規模から考え不可能であり、現時点での最高密度(共生藻培養の)は、実際のミドリゾウリムシ体内における共生藻密度の100分の1に留まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミドリゾウリムシ体内における共生藻密度が、10の10乗個共生藻/mlという高密度であり、しかもその状況を実験室での液体培養で実現させるためには、現在到達している最高密度である10の8乗個の100倍の規模で共生藻を培養させる必要がある事が明らかになった。これらの2点は、予想外の事実であり、現在どのようにして大量の共生藻を集めることができるか検討中である。現時点の10の8乗個の密度でも、共生藻の培養液は相当な粘ちょう状態であり、さらに100倍の高密度が実現できても、培養液の流動性はほとんどないものと予想される。その状態で、ミドリゾウリムシ体内で観察される「原形質流動」を培養系で実現させることは不可能であろう。H24年度は、いくつかの成果を挙げられたと同時に、研究を進める上でいくつかの予想外の事態が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、現在確立されている範囲での共生藻密度条件で、それぞれ共生藻がどのような糖生産能力を発揮しているか、個々の培養系(10の3乗個~8乗個共生藻/mlの範囲)での糖生産能力の定量を行う。 共生藻の培養条件の検討と併せて、ミドリゾウリムシの増殖条件の検討も行っている。その過程で、ミドリゾウリムシを大量に増殖させ、今までの行われていないミドリゾウリムシの「ゲノム解析」を開始可能な状況になった。本研究が開始された時点では予想されていなかった研究の進展である。国立遺伝学研究所との共同研究に採択され、ミドリゾウリムシのゲノム解析を本格的に開始している。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書に記載の通り、ミドリゾウリムシの培養や共生藻の培養のための培地、培養容器などの購入を実施する。
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