韓国における結婚移民女性への就労支援は、既存の就労支援政策が結婚移民女性に対する理解不足により体系的なインフラ構築には至っていなかった。このことへの反省から、2008年の多文化家族支援法の制定とともに国務総理室傘下に多文化家族政策委員会が設置された。同委員会では「結婚移民者就労支援政策(2010年5月)」を打ち出したことにより、結婚移民女性への就労支援とその充実化を目指された。さらに初期の雇用労働部による政策は、外国人労働者の管理という側面が強かったが、2010年以降は、全国の雇用センター及び職業訓練機関を活用した結婚移民女性への就労支援へと歩みが進められた。また、女性家族部では、民間(女性人力開発センター、福祉施設、大学、民間企業など)に委託した雇用サービスが実施され、モデル事業として全国6カ所の施設に417百万ウォン(約3、800万円)の財政支援を行っている。上述のように韓国政府による在韓外国人への就労支援は始まったばかりであるが、結婚移民女性への就労支援は中間組織(NGOや市民団体など)よる支援が積極的に行われていた。したがって中間組織抜きには語れない。なぜならば、政府による支援が出される以前より在韓外国人への支援が手厚く行われていたからである。 こうした中間組織による結婚移民女性への就労支援は、スタッフの実践知によるものであり、彼女らの経済的自立を促すものとして考えられる。そこで本研究では、大田移住女性人権センターの職員および、中間組織の支援により起業に繋がった結婚移民女性を対象に職場への参与観察やインタビュー調査をとおしてその意義を確認している。なお、調査結果については学会をとおして報告している。
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