研究課題/領域番号 |
23610002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渋谷 博史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00226193)
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キーワード | 社会福祉 / 芸術文化NPO / コミュニティ / 人種 / 租税優遇措置 / 連邦補助金 / 州・地方補助金 / 民間財団 |
研究概要 |
近年のアメリカ福祉国家の最大の特徴は、就労支援型への社会福祉への転換、再編である。本研究は、その就労支援型の福祉を典型的に示す事例として、大都市部における芸術文化支援策の就労支援策への活用を取り上げる。それは同時に、大都市部の貧困地域の再生策であり、また、貧困地域における青少年育成策として芸術文化教育プログラム支援策の政策手段として、第1にさまざまな租税優遇措置や連邦政府および州・地方政府の補助金がある。 平成24年度は、ワシントンDCで連邦政府関係の資料を収集し、さらにNPOのファイナンス面に特化した情報提供を任務とするFoundation Centerで芸術文化NPO関連の資料を収集できた。とくに、各地域の美術館や図書館の運営が、NPO形式で実施され、租税資金よりも民間財団や個人の寄付金の比重が高く、それらの資金の受け入れに対応する形で、上記の地域福祉に寄与する様々な活動の実績が報告されていた点が、興味深いファクトファインディングとなった。 平成25年度は、そのような芸術文化NPOを軸とする地域福祉活動が、人種的・民族的な側面も重要な要因として展開される側面を重視して、調査研究する予定である。すなわち、就労支援型への社会福祉の転換も、地域レベルのコミュニティ活動をベースとするNPO等の実施主体を視野に入れて考察すべきであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ワシントンのFoundation Centerにおける芸術文化NPOの活動にかかわる情報収集によって、当初想定した以上に、地域レベルのコミュニティにおける芸術文化NPOの活動が、人種や民族ベースに実施されることを重視できるようになった。とくに、各地域における美術館や図書館が初等中等教育の機関と共同して実施する教育プログラムが、就労支援策の一環となる創造力育成を目指すものであった。平成25年度の調査研究に向けて、それらの事例に着目して、視野を広げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の前半は、ワシントンのFoundation Centerや主要シンクタンクで情報・資料の収集を図り、可能であれば、ニューヨーク市内のヒスパニック系の芸術文化NPOの調査を実施する。 後半では、単著『アメリカの芸術文化と就労支援型福祉』の刊行に向けて、資料を整理し、解読して、執筆作業を始める。 そのために、日本国内の関連分野の研究者からのアドバイスを受けるワークショップを数回開催したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、アメリカのワシントンとニューヨークにおける現地での情報と資料の収入に重点をおき、年度の後半では、単著『アメリカの芸術文化と就労支援型福祉』の刊行に向けて、資料を整理するとともに、国内の関連分野の研究者からのアドバイスを受けるために数回ワークショップを開催する。
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