本研究の目的は、「小さな政府」と民間主導というアメリカの福祉政策特徴があらわれる典型的な分野として、芸術文化支援策の福祉面での活用という分野を取り上げて、実証的に検討することである。地域の民間NPOが主体的にすすめるプロセスを、州・地方政府のレベルで租税優遇措置や補助金等の政策手段を使って手助けする仕組みがあり、さらにその仕組みの中で州・地方政府が連邦レベルの政策手段を裁量的に活用するという切り口から迫る。ワシントンにあるNational Endowment for the Arts(連邦政府の中の芸術文化支援の組織)、Alliance for Arts(地方政府レベルの芸術文化担当の部局あるいは組織の全国協議会)で、地域主導の芸術文化政策に対する連邦政府の政策システムに関するインタビュー及び資料収集を行った。また、地域振興策の体系の中に芸術文化政策を有機的に織り込む手法について、サンフランシスコ市や、バージニア州アーリントン郡の担当部局でのインタビュー及び資料収集を実施できた。具体的には、フロリダ教授のクリエイティブ・クラス論やクリエイティブ産業論を理論的な支柱として、IT産業等の誘致に有効な地域作りにとって必要不可欠な分野として、芸術文化の振興を位置づけており、クリエイティブ・クラスの人々にとって魅力のある居住空間として、クラシックな音楽や美術の鑑賞に限らず、野外のパブリック・アートについても世界レベルの芸術家による作品を体系的に配置する都市計画があり、また他方では、クリエイティブ産業に整合的な形とレベルの人材の開発に、芸術文化的な教育システムを配置する工夫もある。
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