研究課題
平成25年度は、日本的心理療法の一つである内観法の想定する「成長」「成熟」の観念に関する調査、小学校の道徳教育や人権教育に関する調査などを中心に研究を進めた。また、日本公民教育学会などの学会や研究会でこれまでの研究結果に関する報告を行った。2013年3月に、ある内観研修施設で実際に内観法を体験した。その縁で同年7月に開催された九州内観懇話会で、体験発表をさせていただき、また内観の専門家の方々と知り合うことができた。私が想定してきた日本型共生の基礎となる個人の「成長」「成熟」の理念と、内観法の前提にあるそれらの理念との類似性を確認することができた。小学校の訪問調査に関しては、授業を見学させていただいたり、小学校の先生方からお話を伺い資料をいただいたり、教員の研修会を参加したりするなどの機会を得た。日本の小学校の道徳教育、人権教育では共感能力の育成に重点が置かれていること、およびその具体的な手法について知見を深めることができた。研究成果の報告に関しては、平成25年6月に日本公民教育学会(岡山大学)で「人権教育と文化への配慮」という題目のもと、日本型共生の理念に基づく人権教育のあり方について報告した。また、その他、いくつかの研究会で日本文化に根差した「善き生」の理念と、他者との共生との関係性、そして政治におけるそれらの意味について発表する機会を得た。その他、自治体での講演(例えば小郡市、北九州市など)や市民講座(福岡県筑後市)などで研究成果に基づく知見を一般の方々にお話しする機会もいただいた。全体の研究成果としては、まず、日本文化に根差した「共生」理念を考えるうえでの理論的前提を明らかにした。また、日本で優勢な「善き生」の捉え方を踏まえつつ、「共生」理念を定式化した。加えて、それとの関連で、「人権」や「国際理解」、「平等な処遇」などの価値を説明する議論の構築を目指した。
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Sakurai, T. and Usami, M., eds., Human Rights and Global Justice: The 10th Kobe Lectures, July 2011 (Archiv für Rechits- und Sozialphilosophie)
巻: Beiheft 139 ページ: 117-129