本研究の目的は、アメリカにおける高齢貧困の実態、近年の政策的対応の内容、成果、限界、またそれらを決定づけている社会的諸条件を明らかにすることにあった。本研究では、中心成果である『アメリカの年金システム』を中心に、高齢者世帯の貧困率の高さ、ブッシュ、オバマ両政権における公的年金改革の頓挫といった「硬直性」の要因を、アメリカにおける「自由主義」の伝統の帰結という観点から整理を試みた。一方で、それは単純にアメリカの社会保障制度の拡充を妨げているだけではなく、基礎的保障の論理、受給権保護の論理といった独自の規範として、公的年金の安定性と企業年金の柔軟性を支える要因となっていることを明らかにした。
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