研究課題/領域番号 |
23611003
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 早里 筑波大学, 芸術系, 准教授 (90300029)
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研究分担者 |
槇 究 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (10276454)
熊澤 貴之 岡山県立大学, デザイン学部, 講師 (30364102)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 景観 / 色彩 / 建築 / 心理評価 / 街並 |
研究概要 |
景観法が制定されて以降、景観施策は進展しているようにみえるが、景観色彩の施策は数値で彩度の上限を決める画一的な手法が主であり、地方の文化性、住民の意見、審美性を考慮するまでに至っていない。本研究では、法律の趣旨である地域再生を目論み、景観色彩を中長期的に改良する手法を開発することを目的とし、平成23年度は次の研究を行った。1.地域性のアプローチとして、日本の都市の規模および言語環境が類似しているシンガポールを調査したところ、色彩計画については材料や主旨を丁寧に説明することによって誘導を図っており、数値による規制はみられなかった。屋外広告については厳しい規制をしており、地域の特徴と連動させた細やかな誘導が見られた。韓国の色彩施策も調査を継続している。2.合意形成のアプローチとして、仏国ローヌアルプス地方のCAUEが取り組んでいる協議システムのヒアリング調査を行った。強制力はもたないものの、町の環境改善に向けたデザインのアドバイスを行い、有効的な協議システムが運用されていることが分かった。実施された6か所で各々の色彩計画に関与した主体にヒアリングしたところ、実施の背景には環境悪化の共通認識があり、目的には観光など来訪者の増加による活性化、居住者と来訪者の快適性向上があった。方法としては外壁の塗り替えが多いが、新築には色彩マスタープランが策定、実施されていた。3.審美性のアプローチとして、景観色彩として最も問題があるのは看板等の屋外広告であると考え、東京都内を中心に商店街の資料を収集した。看板を含んだ商店街の問題点を列挙し、反対に参考となる事例の収集を継続している。また、看板の色変更がオリジナルイメージ等へ及ぼす影響を印象評価実験を実施して探った。ロゴアイデンティティを保持するには色相を残すことが重要であることが分かり、また、目立ちかつ落ち着きの感じられる色変更の可能性を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、地域性のアプローチ、合意形成・誘導手法のアプローチ、審美性のアプローチの3つのアプローチによる調査分析を行い、結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、3つのアプローチによる調査分析を行う。地域性アプローチでは引き続き、韓国ソウル、スペインバルセロナ、スウェーデンストックホルムなどの色彩誘導手法を調査する。合意形成・誘導手法のアプローチでは諸外国の合意形成手法を調査する。審美性のアプローチでは、平成23年度に行った予備実験を基に本実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
景観色彩の施策を中長期的に改良するために、諸外国の事例分析の調査や審美性を明らかにするための実験などを行う。このため、旅費、物品費、被験者への謝礼を支出する。
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