研究課題/領域番号 |
23611003
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 早里 筑波大学, 芸術系, 准教授 (90300029)
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研究分担者 |
槇 究 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (10276454)
熊澤 貴之 岡山県立大学, デザイン学部, 講師 (30364102)
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キーワード | 景観 / 色彩 / 建築 / 心理評価 / 街並 |
研究概要 |
本研究は景観法以降の日本の景観色彩行政が数値規制の傾向にあることに対し、地方の文化性、住民の意見、審美性から再考し、地域再生を目論んだ中長期的な改良手法を開発することを目的としている。平成24年度は次のような研究を行った。 1.地域性のアプローチでは2箇所の調査を行った。スペイン、ジローナでは建築内部の改修時に外壁色まで改装し、街の印象の向上につながり、さらに他の再開発にも同様の色彩が使われ、地域性の好事例であった。中国の伝統的な町、周庄鎮の色彩調査からは、中国の伝統的な色彩の傾向を得ることができた。他に、日本の浅草などを対象に、街並みの地域らしさを明らかにする被験者実験を行っているが、現在解析中である。 2.合意形成のアプローチとして、フランス,アルザス地域圏コルマールの保全地区で定められている保全再生計画と運用方法についてヒアリング調査を行った。その結果、保全再生計画の策定過程、保存・再生・修復過程で、監視官や建築家など専門家からのアドバイスを基にした協議システムが確立していることが把握された。さらに、建築ファサードの構成部位について色彩の実測調査を実施した結果、基調色としてはYR系の色相が8割程度使われていることが確認され、木材や土壁、石材、煉瓦などの天然の材料が使われていた。保全再生計画で述べられている内容が着実にデザインとして具現化されており、保全再生計画が高いレベルで実現されていた。 3.審美性のアプローチとして、昨年度に引き続き、景観色彩として問題に挙がることの多い屋外広告を扱った印象評価実験を実施した。複数の看板を挿入した街路景観画像の評価から、街路景観ごとに看板の許容力が異なる、街路景観によって好ましいと判断される看板が異なるという、街路の特徴に応じて複数の基準・規制を用意すべきことを示唆する結果を得た。そのほか、商業地域を対象とした色彩実測調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、3つのアプローチそれぞれに、調査、実験を行い、結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
日本の景観施策に活用できる事例を選出し、国内外での景観色彩調査を実施する。審美性のアプローチでは、色彩規制による効果のシミュレーションを実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の実施計画中、一部の現地調査を平成25年度に行った方が、効率的な調査が行えることがわかったため、一部繰越を行った。平成25年度は、この現地調査を含めた、景観施策に活用できる事例の現地調査、ヒアリングを国内外で行うために旅費を使用する。審美性を明らかにする被験者実験を行うために物品費、謝金を使用する。
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