研究課題/領域番号 |
23611005
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
平賀 瑠美 筑波技術大学, 産業技術学部, 教授 (70327021)
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研究分担者 |
大塚 和彦 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (80331304)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 聴覚障害 / 演奏支援 / 可視化 |
研究概要 |
本研究は,聴覚障害者が簡単に利用でき,演奏の楽しみを共有できる演奏支援ソフトウェアを公開することを目的としている.平成23年度は以前に作成した演奏可視化ソフトウェアを用いて試用実験を行い,実際に聴覚障害者に音楽療法を行っている現場を見学して,関連研究者,実践者と意見交換を行った.実験では,聴覚障害を持つ大学生4人がMacOS上のソフトウェアMax/MSP/Jitterを用いて作成した演奏可視化ソフトウェアを利用した.演奏は音の出るものなら楽器でもなんでも構わないが,身近にあるMIDI楽器 (MIDIドラム,MIDIキーボード,Miburiというwearable楽器)を使用した.試用実験により,一人が演奏して動画が演奏に同期して作られるという状況は面白い,面白いので,演奏をするという意識を特に持たなくとも,楽器演奏をしてみようという気になる,という点では画像の同期を行うソフトウェアは聴覚障害者に演奏の楽しみを喚起できると言えることがわかった.しかし,さらに,複数の人が同時に演奏して,演奏ならびに画像の変化の相互作用を楽しむという状況を作り出すためにはソフトウェアの改善が必要であろう.関連研究者との意見交換では,聴覚に障害があって音楽経験がない人でも,音楽に接することで明らかに変化があること,聴覚障害者への音楽の提供の方法は試行錯誤を重ねていること,など共通の観察事項を確認した.また本研究で簡単に利用できる演奏支援ソフトウェアを公開すれば利用してもらえそうな場面もあることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試用実験を聴覚障害者のみで行ったが,ソフトウェアの利用形態として,複数の使用者が同時に使用して演奏コミュニケーション(たとえば感情の疎通)が可能かということまで深く調べたかった.理由の一つは交付時期の遅れで,実際の開始時期が遅れた.さらに,平成23年度は夏季休業中は聴覚障害を持つ学生が全員帰省するよう大学からの指示があったため,聴覚障害をもつ学生を被験者とする試用実験を進めるのに最適な長期休暇が利用できなかったというのがもう一つの理由である.学外の関連研究者との意見交換は順調で,作ろうとしているソフトウェアの潜在的需要があることが明確になり,研究目的の意義を確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の試用実験の結果をもとにソフトウェアの改良を行い,それを用いた試用実験を平成24年度も行う.一般公開前にアルファ版のソフトウェアを聴覚障害者に対して音楽療法を行っている研究者に配布して意見を求め,改良を続ける.改良については,特にインタフェース,聴覚障害者の特性を意識して行いたい.また,ソフトウェアやその使用について,論文にまとめたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究費のうち35万程度を平成24年度に使用することになる.これは,試用実験が進んでいればソフトウェア改良発注のために使用するはずの経費であった.平成24年度は,問題なくソフトウェア改良を進めることが期待できる.また,積極的に国内外へ出張をして情報発信ならびに情報収集や意見交換を行う.
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