2013年度は聾学校,難聴者学級を訪問し,本研究で作成した演奏可視化システムを聴覚障害を持つ幼稚園児から中学生に使用してもらった.9月13日佐賀県立佐賀聾学校(小学生9人,中学生6人),11月25日茨城県立霞ヶ浦聾学校(幼稚園児9人,小学生14人),12月18日つくば市立竹園東小学校すずらん教室(難聴者学級 4人)を対象とした.訪問時は,可視化システム,スピーカ,シンセサイザ2台を持参した.いずれの訪問先でも生徒・児童たちは非常に興奮して,繰り返しシステムを使用していた.音を感じることができる子どもの場合は,音と画像の動きを結びつけることができるため,教師たちは特に音声コントロールへの応用を期待したようである.これらの訪問におけるコメントを基に,二人の演奏者が互いの演奏を意識できるようゲーム的な要素も取り入れ,演奏可視化システムを修正した. 研究期間内においては,聴覚障害者の音楽認識についての基礎実験も行った.音色の認識について,聴覚障害者は異なる音色の提示に対し,異なると認識しにくいことが分かった.ハーモニーの認識について,聴覚障害者と音楽経験者の間に差があり,聴覚障害者が音楽を聴くとき,ハーモニーによる嗜好はないことが分かった.健聴者のうち音楽経験の少ない者は,聴覚障害者と音楽経験者の間に位置するハーモニー嗜好を示した. 聴覚障害者の音楽認識の基礎実験はあまり行われておらず,新しい結果を得ることができた.研究期間内に行った音楽認識実験結果は可視化システムに反映することはできないことが分かったが,今後も異なる音楽要素について,聴取に関する基礎実験を続け,聴覚障害者が音楽を楽しむ支援に活かせないかどうかを調べる.演奏可視化システムを子どもたちに実際に使ってもらい,楽しんでもらえることが分かったので,ハードウェアサポートもしながらソフトウェアを配布する予定である.
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