研究課題/領域番号 |
23611007
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
桐谷 佳惠 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00292665)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コミュニケーション支援 / 情報ゲシュタルト / 可視化 / acting evaluation |
研究概要 |
本研究は,コミュニケーションの円滑化を促す情報ゲシュタルトの可視化を,実際のメディア制作を通じて行う。研究対象事態は,麻布大学ERCAZの小学校での出前授業をめぐるコミュニケーションである。情報の発信者はERCAZのメンバー,受信者は小学校教員となる。制作物は,当該授業プログラムに関する利用者マニュアルで,ユーザは小学校教員である。 本年度は,まずは情報の発信者の意向にそった形でマニュアルを制作した。2回の試作を経て本制作を行い,評価実験を行った。さらに,予備実験の結果から,マニュアル本体以外に情報を抜粋した簡易版の必要性が示唆されたため,その制作も行った。 評価実験は,マニュアルの視覚的完成度も測るため,デザイン専攻生を対象に行った。その際,本来のマニュアルユーザである小学校教員になったつもりで考えながら制作物を評価してもらった。このやり方を,acting evaluationと名付けた。これは,予備実験の結果から有効性が示唆された評価法である。 実験結果から,実験参加者は,犬嫌いやアレルギーの児童への配慮を一番の懸案事項としていることがわかり,ERCAZ側の主張が的確に伝わっていないことがわかった。つまり,情報ゲシュタルトの内容に関して,情報の全体像をつかませるため操作の一連の流れを理解させる情報だけでなく,ユーザが不安に思う問題の解決を図る情報提示が重要であることが示された。また,情報の少なさを問題とする実験参加者がいる一方で,情報過多を指摘する実験参加者も多かった。これは,情報ゲシュタルトの質と量に関して,重要度に応じてメリハリをさらにつける必要があることを意味する。 今年度の研究成果の意義・重要性は,1)マニュアルの情報ゲシュタルトの切り出しには情報受信者の不安解消が重要であることを示し,2)マニュアル評価の一つの形態を試したこと,にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
制作物制作に欠かせない,情報の発信者であるERCAZからのフィードバックが遅れ気味で,研究全体の進行がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
上記問題点を解決するため,早めにERCAZに依頼をかけると同時に,来年度はさらに積極的に直接面談を行うことにする。 来年度は,(個別的,静的な)マニュアルの紙面構成と(連続的な)情報提示全体を,知覚のゲシュタルト要因の観点から改めて整理し,ユーザの疑問・不安点の解消に重きをおいた制作物の効果を確かめる。今年度に引き続き,acting evaluationの可能性をつめるとともに本来のユーザである小学校教員を対象とした評価も行い,情報提示ゲシュタルトの切り出しに対する答えを得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果の中間報告を,国際学会にて発表するため,旅費が全体の1/3を占める。さらに,制作物制作への謝金,評価実験への謝金が今年度の倍額を予定しているので,これらも研究費の1/3を占めることになる。残りの1/3を,制作物制作に必要なもの,打ち合わせ用交通費などに当てる予定である。
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