今年度は研究1~4のうちの研究1・3・4を実施し,その成果を学会発表および論文を通じて報告した.研究1「照明が第一印象形成に与える影響」では,左側から照明を当てた顔や図形は右側から照明を当てた顔や図形よりも好まれる傾向があることを確認し,さらに,このような傾向と大脳左右半球機能差との関連を検討した.視野分割呈示法を用いた実験の結果,左側から照明を当てた顔や図形を好む傾向と大脳左右半球機能差との関連性は弱く,むしろ視野の左側から右側に向かって情報を処理する傾向(Reuter-Lorenz et al. 1990)との関連性が強いことが明らかになった(Horibata et al. 2013).研究3・4「特定ジャンルのモノに対するこだわりが好き嫌いの評価基準に与える影響」「飽きが生じるメカニズムの研究」では,外国人が日本のマンガに対する愛着を発達させるプロセス(Ahmad et al. 2013)および植物工場産野菜が日本人・シンガポール人消費者に受け入れられるプロセス(You et al. accepted; Zhang et al. 2013)について心理学的に検討した.外国人が日本のマンガに対する愛着を発達させるプロセスの中では模倣のしやすさが重要な役割を演じていることが明らかになり,植物工場産野菜が消費者に浸透するプロセスの中では安心感が決定的な役割を演じていることが示唆された。特に日本では,シンガポールと比べて情報が好みの発達に与える影響が弱く,安心感のような情動的要因が好みの形成に与える影響が大きかった。飽きのメカニズムに関しては日本のマンガや植物工場産野菜を題材として今後引き続き研究を行う予定である。
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