本研究は、これまでアジアの各地において策定・実践されてきたさまざまな地域振興デザイン計画のなかでも、とくに、生活者が担い手となり生活の質的豊かさを追求した内発的地域振興の視座からなされてきた実例を取り上げ、その理念の構築と実践に関する諸相を実地調査を通して明確化するとともに、その知見を生かした「これからの地域振興デザインのあり方」を考究・提示することを目的としたものである。 平成25年度にあっては、アジアにおける内発的地域振興の先進的事例地域といえる以下の調査を行った。○新潟県村上市山北地域における科布制作に関する現地調査、○福島県大沼郡三島町における生活工芸運動に関する現地調査、○京都府与謝郡伊根町における海辺を活用してのものづくり文化に関する現地調査、○福島県大沼郡三島町における全国編み組工芸展示の参与観察。このように、主として、国内における内発的地域振興の視座からなされてきた地域振興の理念の構築と実践に関する諸相を収集した。また、他にも、日本全国の各地域から集められた特に伝統的工芸品に関する情報を集積した。 さらに、平成25年度は、当該研究の最終年度でもあり、国内外の外部研究協力者に本研究の推進を呼びかけ、各国・各地域における内発的地域振興デザインの状況に関する内発的地域振興デザインの事例を収集した(ADSC: Asia Design Culture Society、於:京都府伊根町)。その結果、日本はもとより、台湾、中国、韓国から、166件にもおよぶ報告例があり、その成果はBulletin of Asian Design Culture Society Issue No.8にまとめられている。また、110名にもおよぶ内発的地域振興デザインに関する実践者・研究者から、その実践事例に関する報告がなされ、これからの地域振興デザインのあり方が見出された。
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