研究課題/領域番号 |
23611011
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
小松 裕子 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (30212468)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ICT支援 / 高齢者 / 障害者 / 可視化 / 環境 |
研究概要 |
本研究の目的は、急激な高齢化と急速に進むモバイルネット社会を見据え、高齢者や障害者へのICT支援の在り方を見直し、個人の努力や工夫(目に見えにくく、うまくいけば当たり前の知)を情報支援知として抽出・外化・共有する継続的な社会的支援方法を構築することにある。支援の過程で環境に埋め込まれた情報を情報支援知と呼び、多くの情報(工夫や知恵)は環境に実在するという外在主義的知識観を基本にする。最終的には、被支援者のみならず支援者が心地よく活動し継続できる環境づくりを目指す。 平成23年度は、3年間の研究を網羅的に試行しながら基礎を固めることが中心であった。支援する技能は、暗黙知として実践を重ね身につくと思われがちであるが、本研究では、身の周りに残された痕跡(たとえば、支援の過程で工夫した道具、教材、会話、メモ、記録、作業環境など、支援環境に残された跡など)などをどう収集するかの検討を行った。具体的な調査現場は、富山県高岡市のNPOが主催した講習や活動(高齢者および視覚障害者、聴覚障害者へのICT講習およびICT支援者育成講習)の中で、高齢者や障害者の状況や集団支援の実際を整理した。また、モバイルネットワーク環境での支援について、現状と課題を検討し紀要等で報告した。また、地域活性事例として西粟倉、視覚障害者支援の実際としてSPAN(ボランティア団体)を調査したほか、高齢者や障害者へのIT技術の動向について日本およびアメリカで情報を収集した。そのほか、アメリカの高齢者生涯学習の仕組みや高齢者施設を訪問し、高齢社会の情報技術の在り方の資料を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢者や障害者へのICT支援の実際の調査は順調に実施できた。特に支援者養成講座およびICT講座の実施を通して、個々人の工夫や環境の問題など本研究を進めるうえで検討すべき事項が浮かび上がったため、次年度にむけた調整資料を得ることができた。また、国内調査に加え、前倒しで海外(アメリカ)調査が実施できたことで、事例をより多く収集することとなった。一方、支援環境に残された痕跡や工夫を支援知として抽出するための具体的な方法は、今後継続して研究する必要がある。以上を総合して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の調査および情報の抽出を継続し、結果を共通の情報支援知として位置づけるために、抽出・洗練・分析を繰り返し、抽出した共通の情報支援知を可視化する方法の検討と試作をする。具体的に、モバイル機器や支援製品の利用をモニター、評価することや、人的ネットワークの移り変わりと支援環境を対応させる。また、支援用具の可視化にあたっては、必要に応じ改良を加え、制作する。国内の事例のほか、海外の事例も調査し比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:ICT支援において実施するモニター用の情報機器(タブレットPC等)、および、実験の記録・整理用の機器(PC含む)、それらの基本的なソフト(オフィス、画像処理)と消耗品旅費 :国内調査(佐賀、東京他)、海外調査(韓国、アメリカ)謝金 :モニター謝金、情報整理人件費その他:通信費、学会発表や成果印刷費等
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