研究課題/領域番号 |
23611011
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
小松 裕子 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (30212468)
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キーワード | ICT支援 / 高齢者 / 障害者 / 可視化 / 環境 |
研究概要 |
本研究の目的は、急激な高齢化と急速に進むモバイルネット社会を見据え、高齢者や障害者へのICT支援の在り方を見直し、個人の努力や工夫(目に見えにくく、うまくいけば当たり前の知)を情報支援知として抽出・外化・共有する継続的な社会的支援方法を構築することにある。支援の過程で環境に埋め込まれた情報を情報支援知と呼び、多くの情報(工夫や知恵)は環境に実在するという外在主義的知識観を基本にする。最終的には、被支援者のみならず支援者が心地よく活動し継続できる環境づくりを目指す。 平成24年度は、平成23年度に引き続き、支援の過程で工夫した道具、教材、会話、メモ、記録、作業環境などの、支援環境に残された跡を収集するため、特に視覚障害者や高齢者への支援の現場に出向き、実際の支援、および、支援者講習会の中で、高齢者や障害者の状況や集団支援の実際を、富山県高岡市のICTボランティアの協力のもと継続して調査した。 また、高齢者がどのような支援を必要としているのかの地域比較のため、韓国シニアの現状や東京と富山といった大都市と地方都市との調査も行い、高齢者のタイプを3つに分類して現状と支援の在り方を、学会発表および紀要等で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢者へのICT支援の実際調査はほぼ順調に実施できた。特に新しいモバイル機器への支援の実際と課題を調査することができた。引き続き調査する許可も得ている。また、いくつかのボランティア団体の支援調査の実際から、環境と支援の工夫の具体的な事例を抽出することとボランティアという組織の変遷が非常に強い相関関係があるのではないかという想定が浮かび上がり、今回の研究で今後加味すべき事柄が明確になった。 また高齢者のほか、前年度は視覚障害者支援を中心にしてきたが、今年度は聴覚障害への支援についても調査の範囲を広げ、多様な障害への支援について考慮すべきことを整理することができた。 一方、それらを共通支援知として学習の場へ再配置する方向については十分に検討ができなかったが、次年度にむけての基礎的資料は得ることができた。 以上よりおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度であるため、平成23年度、24年度に収集した支援の工夫を整理し、情報を抽出・洗練・分析を繰り返す。とくに、ボランティアによる支援のあやうさについて再考し、支援の継続に必要な技能伝承という視点と考え方に基づき、支援知を環境に再配置する方法を検討する。後半は、抽出した共通の情報支援知の具体化、および実際の現場での適用を図り評価する。 また、国内外・海外での支援の比較からそれぞれの文化的背景に配慮した情報支援知とはなにかについて、情報を集め考察する。 研究の成果を、学会や紀要等で発表、web上における公開、支援者を集めての勉強会を開催する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:近年のタブレットPC等のモバイル機器の購入、実験の記録・整理用のソフトや消耗品、可視化物の試作材料 旅費 :国内外での調査や発表 謝金 :モニター謝金、情報整理人件費 その他:web制作費、可視化物制作委託費、通信費、学会発表や成果物費等
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