本研究では、高齢者や障害者へのICT支援のあり方について、知識や技術は個々人の中にあるのではなく、身体の外に用意する道具や環境から学び取ることができるという外在主義的な知識観に基づいた視点から捉え、新しい支援環境づくりを目指している。 平成25年度は、前年度から継続した研究として、支援の過程で工夫した道具や長年の改良を重ねた個人の資料など、単に個人の活動として見過ごされてきた工夫や努力(これらを痕跡として捉える)を、実際の支援の現場に出向いて情報を収集・抽出した。また、本研究の最終年度であることから、収集抽出した情報を精査し再配置するための整理を行い、これらの情報を共有するシステムとしてweb(ICT利用のための支援Tips)を構築した。 また、ボランティアが中心とならざるを得ないICT支援の中で、支援活動を継続させるため、計画の変更、講座内容の変更、実践方法の変更は当然あるものという前提で、最初から厳密な仕様をせず、各段階において計画・実践・評価を繰り返し、全体の妥当性を検証するアプローチの新しい人材育成モデル(アジャイル型)を提案し、指導者養成講座およびICT講座の中で実験した。 さらに、支援技術を伝承する際の痕跡利用について学会で発表したほか、痕跡は表面的に観察されるものばかりではなく、時間経過による支援の達成度や共感度を発見できることもあることから、痕跡が人の意識や気持ちの持ちようといった問題にとらわれないICTの継続的な支援方法の鍵となることを考察し紀要に仕上げた。
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