研究課題/領域番号 |
23611012
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
倉本 到 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (20333502)
|
キーワード | インタラクションエージェント / ステレオタイプ / 個性 / 擬人化 / 経験デザイン / リマインダ |
研究概要 |
当該年度は,インタラクションエージェントへの個性の付与について,次の2側面について検討し,それぞれ次にあげるような結果を得た. 1)身体性のあるエージェントのデザインのための基礎技術を調査し,MMDAgentに代表されるバーチャル環境下での3Dモデルに基づくエージェント表現技法の取り扱いに関する知見を得た.本技術は特に自由に音声のコーパスを実装できるため,研究代表者が今後実現を目指している音声対話による個性表出・身体性のあるエージェントによる個性表出の評価のために有用であることがわかった.当該期間では,今後の研究で当該技術を用いた応用を実施するための基礎技術を習得した. 2)エージェントの特性をアプリケーションに応用することを検討し,本年度は「母親」という個性を表出する情報提示システムを提案した.このシステムでは,「母親」がユーザに情報を提示する際に,その提示の強度を表現によって変動させ,ユーザへの印象付けと情報提示に対するユーザの拒否反応(自己判断に対する侵害感に基づく)を調整していることに着目し,「母親」という個性を模したエージェントを実現することにより,情報提示のユーザに対する印象の強度を調整し,ユーザに適切な形で情報を提示し,受け入れさせることを目指している.当該機関ではまず実際の母親が情報を提示(すなわち,ユーザに発言)する際に用いる表現と,その際に発生する印象の違いを美レインストーミング法により抽出する.そして,そこで得られた「ステレオタイプ像としての母親」の表現(=エージェント)をスケジューラのリマインダ機能に適用し,提示されるリマインダを無視・軽視することのないように,またリマインダから強制されている感覚を受けにくいように提示するシステムの設計を行った. 当該年度ではさらに,昨年度の研究成果を,国際会議および国内の研究会で発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画における,身体性および音声合成に基づく個性表出については,基礎技術の検討は進んだものの,実際にどのような音声(声質)や身体動作が個性と接続するか,に関する検討はほとんど進んでおらず,やや遅れていると考えている.ただし,実施計画に含まれている会話・発話表現については,「母親」という特異な個性について分析を進め,一定の成果を得ている.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,下記テーマについて検討する. 1)申請書にあるように,音声によるエージェントの個性表出の調査と検証,その具体的な事例の検討 2)新体制エージェントの個性表出の調査と検証,その具体的な事例の検討 それに加えて,本研究の応用事例とその効果の検証も並行で進める必要があると考え, 3)今年度調査した「母親」エージェントに基づくリマインダシステムの効果の評価 を実施する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
昨年度計画中にあった「身体性を有する」あるいは「音声合成による」エージェントデザインのための計画は基礎検討にとどまっており,エージェントの実現及び評価に必要な機器を購入するための予算が,次年度使用額(493.194円)として今年度分に計上されている. 一方,昨年度までに導入すべきシステムの検討はほぼ終了している.上記で述べたとおり,今年度は,主にユーザ評価と事例検討が必要になる.このことから, 1)評価実験に必要なシステム(身体性・音声合成によるエージェント表現が可能なシステムが動作する計算機環境)の導入 ※上記次年度使用額にあたる研究費はこの事由での使用を予定 2)評価実験の被験者向け謝金 に対して主に研究費を使用することを検討している. また,実用性評価に耐えうるレベルのエージェントデザインに関して理解を深めるために,専門家による意見招請及び実際のデザインに対する示唆,デザインの提供を受けることを検討している.
|