研究課題/領域番号 |
23611013
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
中野 仁人 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (10243122)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 伝統工芸 / 伝統技法 / 文様 / 商品開発 / ブランド展開 / グラフィックデザイン |
研究概要 |
伝統工芸工房のご協力頂き、それぞれの工芸品のデザインに関する調査を進め、現在生産されている製品および過去に制作されたもののデザインに関して、現物を通じて分析をおこなった。23年度は、森本錺金具.金彩荒木,浅田製瓦、大石天狗堂かるたを対象に調査を進めた。これらの工房は創業以来受け継がれて来た図案と新たな商品開発のための新しい図案の生成との格差を埋める作業に苦慮して来た。その中で生き残って来た図案の特徴を検証し、抽出することは、その工芸品を人々がどのように受容して来たかを推し量ることでもある。同時に実際の商品デザインの開発をおこない、伝統技法と表現、市場の関係を探求した。古典的文様の引用、および改変によって試作した工芸品を京都および直島のギャラリーで展示し、広く公に真価を問うた。また、江戸時代から現代に至る京都の工芸品に関するデザイン資料及び掲載書籍等資料を収集、分類し、分析、検討を加えた。工芸に用いられて来た図案が、同種工芸品においてあるいは他種工芸品においてどのように仕様および引用されてきたか、また現代のデザインにどのように影響を与え、展開されて来ているかを検証した。また一方で工芸品に限らず、近年のデザインにおける日本的グラフィック表現の特質、変遷をたどり、消費者がデザインを通して、日本的表現を如何に感じ、受容してきたかの検証をおこなった。これらの結果を踏まえ、工芸資料を写真画像として撮影し、アーカイブの作成を進めている。そしてそれらを24年4月から京都新聞誌上に毎日連載のかたちで、広く紹介する活動を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際に工房と共に研究および開発をおこない、それを公の場で公表出来、その様子は新聞やテレビなどで大きく取り上げられた。また、23年度の調査結果をもとに24年の一年間、新聞紙上での連載を開始することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に着手した各工房における図案の調査を継続するとともに、日本的表現の特質の抽出と分類を進める。そして現代の製品デザインへの効果的な展開と、今日的表現との融合の可能性について、新たな日本的表現の構築を目標に研究をおこなっていく。前出の工房における図案について分類整理したものをもとに、技術との関係、製品用途の関係、使用者との関係等について検討し、工房毎の報告書としてまとめる。一方で調査研究をおこなった近代デザインにおける日本的表現についてまとめあげる。図像の形成法、モチーフの便化法、空間の扱い、色彩の扱い、レイアウトの展開などについて考察し、日本的表現の特質を明確にする。そしてその特質について各工房の職人に提示し、製品の使用者、消費者の意識と時代の流れをつかみながら、伝統技術との接点を探っていく。この段階では、具体的な制作の実験を繰り返し、常に実践的な研究とする。そして、同時に市場調査を進めた上で、商品としてのブランディングをおこない、年度内にその成果としての新しい伝統工芸品の展示発表会をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、主に工芸品の調査分析、アーカイブ作成をおこなうため、そのための物品、消耗品および旅費として使用する。
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