2年にわたって伝統工芸をめぐる資料収集、工房訪問、職人へのインタビュー、ディスカッションをおこなった。そして、工芸品を撮影し、そのうちの365点を京都新聞紙上に連載、その後、25年10月に書籍として出版した。 また、京都の伝統工芸工房と連携し、あらたな購買層獲得のために商品の企画・デザインを提案した。工房を訪ね、その技法の特質とそれによって生み出される工芸品の特徴について調査分析を重ねた。それと同時に工芸品をめぐる市場調査をおこない、今求められる工芸品の価値について検討を進め、その後、複数の工房を横に繋げるかたちでブランドを想定し、ブランドイメージにあったデザインを構築、実際の工芸品を作り上げるプロジェクトを展開した。とくに注目したのは、高価で特別なものとしての伝統工芸品ではなく、現在の日常生活の中で活きるモノとしての伝統工芸技法の活用である。生活になじみ、使う喜びを感じられるものづくりを目標に、商品の企画構想を練った。その間に、協力頂く4つの工房(京瓦、金彩、錺金具、唐紙)と密に連携し、方向性について検証を進め、デザインの提案、製作技法の検討をおこなった。こういった一連の流れは、伝統工芸工房における新しいデザインプロセスの導入の可能性を示唆することとなった。また、作品を展示およびカタログにまとめることにより、事業をわかりやすく視覚化することが出来た。さらに、シンガポールにおいて、展覧会と共にシンポジウムをおこない、いずれの国においてもグローバルなものづくりを目指すには、まず自国で培われてきた文化や伝統技術を再検証し、それを現代の世の中にあった形で展開することが重要であるという認識を再確認した。
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