「人は色彩とどのように関わっているか」を念頭に置き,生活科学の視座からコミュニケーションツールとしてのカラーデザインの戦略的な導入・展開を目指した.最終年度は生活環境色彩の戦略的導入と展開について,実験の補完と総括を行った. 食環境領域では,嗜好食品である市販の果実系原料ジュース(紙製パッケージ)のパッケージデザインについて,色彩とデザインの訴求効果を視線分析により検討した.その結果,アップル,オレンジなど単一果実ジュースのパッケージデザインや色彩は商品選択に影響しないが,複数果実のミックスジュースのパッケージでは,一般に果実系ジュースには使用されない青を配色した場合に訴求効果が大きくなる.さらに,同一果実ジュースでデザインが異なるパッケージ(3種)の配色構成図を刺激とした視線分析から,対照トーン配色に被験者の視線が集まる傾向が認められた. 住環境領域では,人の注意を促す対象物として誘目性や視認性が必要とされる広告看板の配色効果について,情報の受け手である人の視線分析により検討を行った.その結果,広告看板と背景となる環境にトーン差がある場合に,また,vividトーンを配色に取り入れる際は文字と背景にトーン差がある場合に誘目性の向上が認められる. 使用する色や組み合わせによってはsoftトーンやpaleトーン配色が視認性の向上に効果的であることなどを明らかにした. 衣環境領域では,3Dプリンターにより作成した7歳男児の1/2ボディーを用いて子供服における再帰性反射材の配置効果について検討を行った.その結果,袖口や裾に再帰性反射材を配置することは,衣服の幅や裾の把握に有効である.また,上腕部外側や背面上部にも配置することで視線が衣服の上下左右に移動し,衣服の外形全体を把握できることなどを明らかにした.
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