研究課題/領域番号 |
23611017
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
木下 武志 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (90244772)
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研究分担者 |
長 篤志 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (90294652)
松田 憲 山口大学, 理工学研究科, 講師 (10422916)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | デザイン心理 / 造形心理 / 視野空間 / シュパヌンク / 見えの大きさ / 幾何学的図形 / 分散分析 / 調整法 |
研究概要 |
視覚デザイン分野のコンテンツは、その構成要素(文字や画像)の形・色・質感を選択・配置する場合に、その視覚的バランスに対して「シュパヌンク」は多大な影響を与えていると言われている。元来、独語である「シュパヌンク」は我が国では「空間勢力」と定義され、図形内部や図形の外部、図形と図形や枠との空間に作用し、視野内で物理的に配置した位置から移動して見える錯視(距離や間隔が正しい位置に視認できない。)や見る側に緊張感を与えていると考えられている。これを視覚的に調整するには、「シュパヌンク」の空間の場への影響・効果(方向や強さ)について明らかにすることが求められるが、従来画家やデザイナーらの経験則で捉えられて感覚的に処理されてきており、国内や海外においても科学的に検討されていない。当該研究は、この「シュパヌンク」についての定量的な感性情報の基礎データを得ることを目的とする。具体的には、平面図形を刺激とした心理実験を行い、その結果を元に定量的評価を行う。平成23年度の研究成果としては、ディスプレイ表示した平面図形のプロポーション、配置の角度を段階的に変化させた実験刺激を制作とした。制作した図形は黄金三角形、直角三角形、√2矩形、黄金矩形、√4矩形、正六角形、滴形の7種類で、図形の色はディスプレイ測色計で測色した中灰色とした。各図形で基準刺激と比較刺激を制作し、調整法を用いて心理実験を行なった。実験参加者は20~24歳(平均年齢22.3歳)の大学生、合計40名が参加した(男性20名、女性20名)。配置角度を要因とした一要因分散分析により分析した結果、見えの大きさが大きいのは配置角度が垂直方向の刺激が多く、小さいのは水平方向の刺激が多かった。また、図形の各頂点から外部へ向かう指向性の方向が影響していることと関連付けられることから「シュパヌンク(空間勢力)」との関連性が推測できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の実施予定である心理実験の刺激図形の種類や図形のプロポーションの選択、及び配置の角度を段階的に変化させたディスプレイ表示用の実験刺激を制作した。その刺激図形をディスプレイ測色計で測色した上で心理実験を行なった。その結果データの分析及び検討を行い、「シュパヌンク」の定量的な感性情報の基礎データを得ることができた。また、「シュパヌンク」について、文献資料の調査と収集、美術大学等の専門教育機関を訪問し、専門家との意見交換を行うことができた。そして、当該研究の成果の一部を芸術工学会の大会で発表を行った。また、その成果の一部を芸術工学会へ投稿し採用された(平成24年9月掲載予定)。更に、平成24年度に成果の一部を日本感性工学会へも論文を投稿中であり、更に日本デザイン学会大会(平成24年6~7月)で発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.図形と図形との空間に影響を及ぼす「シュパヌンク」の視覚的影響を調べるための刺激図形を制作する。2.上記の刺激図形を用いてマグニチュード推定法を用いて心理実験を行い、考察及び議論を行う。3.刺激図形の色の3属性を変化させて、配置角度の差を変化させた刺激の考案と制作、及びディスプレイ測色計で測色する。4.上記の刺激図形を用いて一要因分散分析や因子分析を用いて心理実験を行い、考察及び議論を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,以下の内容に研究費を使用する。1.研究成果を国内の学会大会や国際会議で発表をする。2.研究成果を学会誌に投稿を行う。3.国内の専門家の研究機関を訪問し、研究打ち合わせを行う。4.刺激の制作に謝金を使用する。5.実験実施に謝金を使用する。6.液晶ディスプレイ用測色計をレンタルする。7.文具やPC関連の消耗品を購入する。未使用額が生じた主な理由は、1)実験刺激に関するアイデアの創出とこれに対する研究分担者との意見調整が遅れた。2)実験に使用可能な実験刺激の画像データを作成することが難しかった。3)1)と2)の理由により、心理実験を開始することが遅くなり、データの分析、考察が遅れた。これにより、研究成果の発表(学会発表と論文投稿)が期間内に予定通りできなかった。この研究成果の発表の量が少なかったことが主な理由である。
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