研究課題
本研究は植物や生き物のような運動表現を得意とする表現技術の確立を研究の目的とする。要素技術として独自に開発中の形状記憶合金アクチュエータを用いる。現在では1方向自由度の運動表現しか実現できていないが、研究初年度までに3方向(全方向)自由度の運動表現ができるアクチュエータデバイスを新規開発中である。第1段階では、アクチュエータデバイスを応用展開させて、高密度マトリックス状に配置したものをモーションディスプレイ装置として完成させた。第2段階では開発したモーションディスプレイ装置を用いて、植物が風になびくような動きの表現を行うことでディスプレイデバイスの運動表現で実現させたメディアアート作品を完成させた。発表・評価方法としてメディアアート表現を用いた作品制作を行い、メディア芸術祭などのコンペで、審査者や鑑賞者から評価を得て、インタラクションデザインの可能性を考察した。以上のような研究の進め方で、人間のノンバーバルなコミュニケーションモードを用いることで、視覚的な情報ディスプレイでは表現できない、直観的な感性情報表現技術の開発に注力した。本年度は、構成要素である形状記憶合金アクチュエータがやわらかく曲がることによって、「植物のような」、「生き物のような」実体の運動表現を可能にするようなモーションディスプレイ装置を開発し、改良を加えた。
2: おおむね順調に進展している
既開発の要素技術である形状記憶合金アクチュエータの構造を大幅に見直し、アクチュエータの素材であるシリコンチューブを特注し、形状記憶合金線材を高性能のものに変更する。反応速度の早いアクチュエータを並べたデバイスディスプレイを開発した。24年度は、メディアアート作品の制作を優先した。研究成果をバーチャルリアリティー学会論文誌にコンテンツ論文として投稿し、採択された。論文タイトルは「Tentacles: 形状記憶合金アクチュエータを用いたイソギンチャクの触手の蠢きの表現」と題して、波間に漂うイソギンチャクの触手の表現を行うために、これまで制作してきたHimawariやPlantとは異なるアクチュエータを開発し、さらにアート作品としての表現力を高めるために触手の動きに対して光と音を連動させることで、インタラクティブ性の高い幻想的な空間インスタレーションを行った。「ISOGINCHAKU」では200ch以上のアクチュエータをコントロールするため、さらに高密度高効率な制御基盤を開発した。現在はデバイス制御のノウハウを用いてハプティック(触知覚)表現への応用展開を進めている。
今後は研究をさらに発展させるため、以下の項目を推進する。・ 引き続き、形状記憶合金デバイスディスプレイの開発・改良を続ける。特に高密度化、高速レスポンス性を追求する。・モーションディスプレイを用いたデジタルサイネージに関する調査を始める。ネットワークを用いた双方向性を検討する。・ インタラクティブな制御方法についてアイデア展開を実施する。人間と生き物のノンバーバルコミュニケーションについて検討する。・ マイクロブログやSNSとの連携を検討する。デジタルサイネージとしての広告媒体分野での応用展開の可能性を検討する。25年度はハプティック表現への応用展開を検討するため、振動子を複合したデバイスの開発に注力する予定である。
平成25年度の研究予算の使用計画については、当初の計画通り設備備品費としては作品展示用のコンピュータ1台を購入する。消耗品費では作品開発用電子部品を購入する。旅費では国内研究成果発表および海外研究成果発表、調査、資料収集を計画している。その他作品制作に伴う人件費やワークショップ講師謝金も計画している。平成25年度の計画:研究をさらに発展させるため、以下の項目を推進する。・ デジタルサイネージに興味を持つ企業との情報交換・意見交換・相互プレゼンテーションを実施し、研究成果の適用を検討する。・ モーションディスプレイを用いたデジタルサイネージに関する調査を始める。ネットワークを用いた双方向性を検討する。・ インタラクティブな制御方法についてアイデア展開を実施する。人間と生き物のノンバーバルコミュニケーションについて検討する。・ マイクロブログやSNSとの連携を検討する。デジタルサイネージとしての広告媒体分野での応用展開の可能性を検討する。・ 国内外で国際的なワークショップを開催する。形状記憶合金デバイスディスプレイの表現の可能性を模索する。ワークショップ教材としてパッケージ化を検討する。 ・ 大学院演習授業や学部演習授業のカリキュラム教材としてパッケージ化を検討する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
日本バーチャルリアリティ学会論文誌(3次元インタラクション特集号),
巻: Vol.17, No.4, ページ: 299-305