研究課題/領域番号 |
23611019
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森田 昌嗣 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (20243975)
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研究分担者 |
曽我部 春香 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (50437745)
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キーワード | 観光価値 / 都市観光 / 観光資源 / 街路空間 / デザインプロセス / パブリックデザイン / 景観評価 / クオリティカルテ評価・診断システム |
研究概要 |
本研究は次の三つの段階で進めている。第一段階は、これまでプロダクトデザインを中心に研究を行ってきたクオリティカルテ評価・診断システムを、街路空間で行う場合の手法を確立する。第二段階では、新たに計画される街路空間デザイン案におけるクオリティカルテ評価・診断システムの手法を確立する。三段階では、それらを統合した上で、具体的な街路空間を設定したケーススタディを行うことで、実用的なデザインプロセスの構築を行う。 平成23年度は、第一段階の研究、地域の観光価値評価のためのクオリティカルテの構築であった。 平成24年度は、既存の街路等公共空間の実態調査並びに景観評価を行い、生活者・観光者双方に価値のある街路空間デザインのあり方に関する検討を行った。特に、福岡市南区役所との協働によって同区内の新たなシンボルロード整備に向けたシミュレーションのためのデザイン案を提示し、区役所職員らとの協議などから具体的なデザイン案作成に向けた方針を策定した。またデザイン案として可視化した街路空間デザイン計画が評価可能であるかの検証を行い、次年度に向けた実験計画を策定するとともに、このシンボルロード整備に向けた街路を評価実験のためのシミュレーション街路に選定し3次元CGの作成を行った。 また、観光の側面では、観光とまちづくりの観点からの先進事例調査を行うとともに、九州各県における観光振興とまちづくりに関する実態把握も同時に行った。その主な結果としては、生活者による地域の積極的なハードとソフトが連携したまちづくりの実践が観光まちづくりの原動力となっていることや、公共空間を軸とした良好な景観整備によって誇れる街を形成し、ひいては観光振興にも結びついていることなどが明らかとなり、観光価値形成のための地域における街路空間デザインには、その効果を生活者に理解させる手法が必要であることが示唆できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」は、本研究では街路空間における観光価値を形成のため、本研究室で構築しているデザイン評価システム(クオリティカルテ評価・診断システム)を利用して、生活者・観光者双方の評価を内包した新たな街路空間デザイン手法の構築を行うことである。この目的に従って本研究は次の三つの段階で進めている。第一段階は、これまでプロダクトデザインを中心に研究を行ってきたクオリティカルテ評価・診断システムを、街路空間で行う場合の手法を確立する。第二段階では、新たに計画される街路空間デザイン案におけるクオリティカルテ評価・診断システムの手法を確立する。三段階では、それらを統合した上で、具体的な街路空間を設定したケーススタディを行うことで、実用的なデザインプロセスの構築を行う。 平成23年度は、研究の初年度であり研究計画(上記)の第一段階にあたる。研究実績の概要に記したように、研究計画の第一段階であるクオリティカルテ評価・診断システムを、同カルテの評価センテンスの抽出と整理・分類によって構築し、2地域でのケーススタディ(評価実験)を通して構築し、そのシステムの有効性を導出した。 平成24年度は、研究計画の第二段階としてまず既設の街路を含む公共空間デザインの実態調査分析及び評価を行い、新たに計画される街路空間デザイン案におけるクオリティカルテ評価・診断システムの手法開発のための資料が整った。また同時に、第三段階におけるケーススタディの街路空間シミュレーションのための3次元CGモデルの作成を行った。一方、観光とまちづくりの観点から先進事例や九州各県での取り組み状況などの実態を把握し、観光振興における生活者を起点とした街並みづくりの必要性などの示唆を得た。 以上、本研究の2年度(平成24年度)も、研究計画通りに順調に進展していると自己点検評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25 年度は、本研究のまとめの年度として以下の流れに従って、クオリティカルテ評価・診断システムの評価手法を確立する。そして、具体的なケーススタディ地域を選定し、実際の街路空間デザインにおいて評価実験を繰り返しながら実用性の検証などにより観光価値形成のための街路空間デザインプロセスの構築を行う。 ○デザイン提案作成:街路景観評価実験を基に生活者・観光者双方に価値のある街路空間デザインを検討・作成し、シミュレーションのためのデザイン案の可視化を行う。このデザイン案の評価を行うために被験者に示すことのできる評価のためのコンテンツを作成する。 ○街路デザイン計画評価実験:可視化した街路空間デザイン計画が評価可能であるかの検証を行い、実験計画を策定し、評価アンケートなどを作成して評価実験を行う。 ○実験結果分析:評価実験の結果を統計解析ツールにより生活者・観光者における評価のズレの可視化(クオリティカルテ評価・診断システム)を行うとともに評価手法の問題点と課題を抽出する。 ○観光価値形成のための街路空間デザインプロセスの構築:現状評価及びデザイン案評価を一体化した街路空間デザインプロセスを構築する。このデザインプロセスを試行するためのケーススタディ地域を選定し、実際の街路空間デザインにおいて評価実験を数回繰り返しながらデザイン計画とそのデザインプロセスをブラッシュアップさせ、デザインプロセスの実用性の検証により問題点と課題を整理し修正等を加えて最終的なまとめを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の交付予定額は、直接経費700,000円、間接経費210,000円であり、平成24年度の直接経費の残額113,378円を合算した額(813,378円)で以下の平成25年度研究費(直接経費)の使用計画をたてる。
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