研究課題/領域番号 |
23611020
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白石 君男 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (90187518)
|
研究分担者 |
上田 和夫 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (80254316)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 高齢者 / 放送音声 |
研究概要 |
平成23年度では、高齢者に聴き取りやすい放送音声の音響パラメータの条件設定を行い、それをもとに3つのジャンルの放送音声を処理した試験用音声を作成し、高齢者について予備実験を行った。対象)実験参加者は、シルバー人材センターから派遣された60歳以上の高齢者31名とした。方法)呈示音圧レベルの設定は、最近の放送業界における音声のラウドネスに関する動向から、全ての刺激音は-24 LKFSになるよう調節した。音源処理のパラメータの設定と試験用音声の作成の処理は、周波数の帯域分割数(4チャンネル)、補充現象を考慮した圧縮増幅の圧縮((2:1)の有無、各周波数の増幅の程度(0 dB, 6 dB, 12dB)とした。これらの設定は、申請した「音声処理装置一式」で行った。音源は、ニュース(12.4秒)、スポーツ(7.4秒)、バラエティ(11.0秒)の3番組とした。実験参加者に、番組ごとに刺激音をランダム呈示し、「聞き取りやすい―聞き取りにくい」、「快い―不快な」、「自然な―不自然な」の3つの形容詞対に対し、7段階で評価させた。結果およびまとめ)スポーツ番組では、500 Hzから1k Hzの帯域を6 dB増幅し、4k Hz以上の帯域の圧縮をかけない処理において、聞き取りやすさが改善されることが示唆された。一方、バラエティ、ニュース番組において同様の傾向はみられなかったが、クラスター分析をおこなうことで、グループによっては圧縮増幅処理により原音と比較して聞き取りやすさが改善される処理方法があることが示唆された。特に、ニュース番組の一部のグループでは、スポーツ番組の結果とは異なり、4k Hz以上の帯域の圧縮をかけた処理の方が聞き取りやすさが改善されることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は「高齢者に聴き取りやすい放送音声の音響パラメータの条件設定と試験用音声の作成」の妥当性について検討した。その結果、放送音声の音響パラメータを変化させると、高齢者の聴き取りやすさが変化することが明らかとなった。しかし、これらの結果を詳細に考察した結果、(1)スピーカの配置により方向性マスキングが生じる可能性がある、(2)聴きにくいとの判断は何によってなされているのかを推定する、(3)高周波数の帯域の圧縮を物理的に確認する、(4)小さいレベルの音の影響をみる必要がある、(5)高いレベルを圧縮するだけではなく、低いレベルの音を上げてダイナミックレンジを視野に入れて検討する、(6)放送音源の迫力などの演出効果を考慮した処理方法を検討する、(7)番組のカテゴリーごとの音声処理の特徴量を求める必要がある、(8)呈示する音のレベルをLKFSとするか等価音圧レベルとするかを検討する、などの課題が明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度明らかとなった以下の課題について検討を行ない、およそ目途がついた時点で、再度高齢者を対象に実験を行う。(1)スピーカの配置、(2)聴き取りにくさの判断基準、(3)高周波数の圧縮の物理的解析、(4)音源の低レベルの増幅とダイナミックレンジ
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、設備備品については計画がない。主に高齢者と健聴者を対象に実験を行い、そのために研究補助者とシルバー人材センターの被験者に謝金を支払う予定である。平成24年9月に開催される日本音響学会、12月に開催される日本音響学会聴覚研究会に研究成果を発表する予定であり、そのための学会参加費や旅費を支出する。また研究成果がまとまれば、論文として投稿する予定でその投稿料を支出する。
|