研究課題/領域番号 |
23611020
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白石 君男 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (90187518)
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研究分担者 |
上田 和夫 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (80254316)
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キーワード | テレビ放送 / 高齢者 |
研究概要 |
平成24年度では、防音室内で高齢者に聴き取りやすい放送音声の音響パラメータの条件設定を決定する予定であった。しかし、防音室の音響特性は、定在波の影響により500 Hz以下が10 dB以上の増幅が認められる周波数が観察された。従って実験を定在波の影響がない無響室でおこなうこととした。 実験参加者は、シルバー人材センターから派遣された60歳以上の高齢者31名に聴力測定をおこない、聴力レベルの影響を出来るだけ統制するために、40 dB HL(6分法)以下の比較的聴力のよい10名とした。 低周波数帯域の増幅が聴き取りやすさに与える影響について、聴取実験から検討した。圧縮増幅処理の条件中では、500 Hz以下と500~1000 Hzを6または12 dB、1000~4000 Hzを6 dBの増幅を施したときに、本実験の圧縮増幅処理条件中では聴き取りやすさが有意に改善された。また、500 Hz以下を6 dB、1000~4000 Hzを6 dB増幅することで最も聴き取りやすさが改善される傾向にあることがわかった。次に、低周波数帯域の圧縮のパラメータにより聴き取りやすさがどのように影響を受けるのかについての検討をおこなった。圧縮増幅処理の条件中では、圧縮比を1.25、スレッショルドレベルを-25 dB FSとすることで有意に「聴き取りやすさ」、「自然さ」、「快さ」が改善された。また500 Hz以下、500~1000 Hz、1000~4000 Hzの帯域に対して6 dBの増幅をおこなうことで、「自然さ」、「快さ」が改善された。しかし、原音に対して有意に聴き取りやすい処理法は、本実験中では認められなかった。今後は、低周波数帯域だけでなく、他の帯域の圧縮や増幅量を最適化することで、圧縮増幅処理により聴き取りやすさが改善される可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では、高齢者に聴き取りやすい放送音声の音響パラメータの条件設定の妥当性について検討した。その 結果、放送音声の音響パラメータを変化させると、高齢者の聴き取りやすさが変化することが明らかとなった。しかし、比較的よい聴力レベルの高齢者では、その傾向が原音に比較して必ずしも明確ではなかった。これは、圧縮増幅が聴力が比較的よいためにあまり有効ではなかったことに起因すると考えられた。したがって、高齢者でも聴力がやや低下している方を対象に、再度実験を試みる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では、以下の2つの実験を行い、結果について取りまとめる。 1)高齢者の中でも聴力の程度により高齢者を分類し、同時に圧縮増幅処理について詳細に検討していく。これにより、本法が高齢者でどのような聴力レベルに有効なのか決定する。 2)実環境を模擬した室内で、無響室内で得られた最適パラメータが有効かどうかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は最終年度にあたるが、実験をより精度よく遂行ためにスピーカ等を購入する。さらに実験補助者を雇用してシルバー人材センターに対して実験を行う。研究成果の学会発表と情報収集を日本聴覚医学会(平成25年10月)、日本音響学会(平成26年3月)でおこない、その旅費と学会参加費に使用する。当該研究の最終報告書の作成を行う。
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