この研究では、聴力の低下した高齢者が聴き取りやすいテレビの放送音源の処理について検討した。方法は、テレビ放送音源を4つの周波数帯域に分割し、各帯域の増幅量や圧縮の比と閾値を調節して、軽度難聴の高齢者の実験参加者に無響室内で聴取させた。その結果、少数の高齢者は、4000 Hz以上の帯域を6 dB増幅することで、原音より有意に聴き取りやすいと評価した。しかし、高齢者の多くが原音より聴き取りやすい放送音源の処理方法は見いだされなかった。以上から、原音に対して全ての高齢者に対して聴き取りやすさの改善される処理法を定めることはできないことが示唆された。
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