研究課題/領域番号 |
23611021
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鶴野 玲治 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (10197775)
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キーワード | コンピュータグラフィックス / ビジュアルシミュレーション / インタラクティブシステム |
研究概要 |
本研究では水や風のような美しい流体の造形をCGでリアリスティックかつ自由に生成し、さらに制御や編集加工できるようなモデルを生成することを目的としている。これまでに形状のリアリティを向上させることと、制御系と編集操作系の調査と開発を行ってきた。 形状モデリングに対しては初年度から引き続き粒子法による流体シミュレーション計算の際に発生する粒子の離散に起因するアーティファクトの軽減を行った。表面張力を持った水は広がる際に膜状になり、引かれる際には糸状になる。しかしその際、通常の粒子法では計算単位となる粒子の密度差が顕著となる。膜や糸の部分は特に疎となるため自然な膜や糸が形成されず現実感のある水の粘性感が出ない。この問題に対して補間粒子を発生させて粒子密度差を軽減させることによって解決を試みた。この成果をまとめた論文が初年度末に採択が決定し次年度(平成24年度)の夏に刊行された。 一方、流体形状の制御や編集の方法についても先行および現行の関連研究調査を行いながらさまざまな方法を試行した。制御する力は自然には存在しえないものであるが、それでありかつ自然に見える必要がある。現時点で流体を粒子法で計算しているため、粒子の動きを決定するナビエストークス方程式の外力項を制御することが有効と考え、時間関数の与え方に焦点を置いた。インタラクティブに目的形状を与え、それに粒子を向かわせるという考え方で、(1)boidモデルのように個々の粒子に意志を持たせてポテンシャル場を使って群制御する方法、(2)粒子配置を含めた目的形状を与え、shape matching法を使って制御する方法、の二種類を試行した。それぞれは3月に国内で研究会口頭発表を行い、特に(2)のモデルは内容が面白いと認められ表彰を頂いた。また、国際会議へ論文発表の投稿を行った。現時点で採録の見通しである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流体形状計算の研究では、初年度に投稿し採択が決定していた論文が平成24年度夏に刊行された。これは膜状や糸状に変形する水の形状を粒子法計算によって生成するものであり、粒子の補間を行って細かな面パッチを構成することでリアリティが向上している。この後、計算単位の最適化を進めており、メッシュ構造を形状によって変更することで計算の大きな効率化が望めることが認められている。 制御系、操作編集系の研究では水を仮想的にコントロールするような先行研究は少なく、複数の手法を調査した結果、動物の群を制御する方法と、弾性体を制御する方法を試行した。それぞれに水に直接関係のある方法ではなく、また、性質も異なる制御方法であるが、求めるイメージに比較的近い動きを与えることが可能であるとの認識に至っている。特に後者は発表の際に学会より表彰を頂いており、反響があったと考えている。さらに国際会議論文に投稿し、現時点でフルペーパー採択と発表がほぼ確定している。
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今後の研究の推進方策 |
計算の効率化と形状的リアリティの向上が常に求められる課題である。流体形状の計算方法としては、現在、粒子の密度をアダプティブに変更することで大幅な計算コストの軽減をはかることに成功しつつある。これによってシミュレーション計算をともなったレンダリング時間の短縮をはかれると考えている。また、流体以外の形状制御の方法として採用しているshape matching法やboid法による要素と流体シミュレーション計算との自然な融合方法を模索する。現在はレンダリング時間も無視できるものではなく、この部分の効率化も考えている。 制御系・操作系では、目的形状、ポテンシャル場、粒子影響力などをインタラクティブに制御する対象として考え、これらの操作編集系の関連研究調査やユーザー評価などを考えている。これらは静的には3Dであるが、実効的には時系列変化を加えた3D(4D)である必要から、この部分を人が逐一詳細に与えるのは操作量が大きくなり、必ずしも現実的ではない。そこで全体的な概形と微細構造とを同時に取得し入力する取得方法としてイメージベースドモデリング手法の可能性を探る。現在、2Dイメージから3Dオブジェクトを生成する際に必要となるデータの補完方法の調査と開発を進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初から流体計算と制御・操作・編集システムの二つの流れで進めている。これまでに流体計算を行うための計算サーバーとデータ編集を行うPCを導入してきた。現在、高速計算・並列計算が本格化しており、これらは大きな力となっている。次年度は計算量を削減しリアルタイムレンダリングを含めたインタラクティブな編集を行えるPCシステムと、実験記録機器の導入を考えている。両者の導入によってある程度の検証が可能になると考えている。また、すでに投稿済やこの後投稿予定の学会、現時点で情報収集途中である操作編集系・制御系分野の関連研究調査のためにそれぞれ旅費とコンファレンス参加費が必要になると見込んでいる。
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