研究課題/領域番号 |
23611027
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
中島 秀之 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 学長 (80344224)
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研究分担者 |
由良 文孝 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (90404805)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 多階層構造 / セルオートマトン |
研究概要 |
多階層構造の発生に関して,生物進化の歴史を調べた.その結果,水の存在,水中でのタンパク質の変形による構造要素の発生,細胞の形成による閉空間の発生とその空間への材料の囲い込み,細胞の連結とその結果としての細胞間の分業などが働いていることが分かった.セルオートマトンのシミュレーションにおいてもこれらの要素を取り込む必要がある.また階層構造は,セルオートマトンの素過程を記述する時間空間スケールとは異なる長距離・長時間スケールの形成を意味する.そこで23年度は,相関関数から得られる評価値を用いたメタヒューリスティクスによりセルオートマトンが示すパターンを模索した.その結果,特徴的なスケールを示す時間発展規則は比較的容易に得られることが分かった.しかしそこでのパターンは,セルオートマトンモデルの持つ強い非線形性のため頑健性を持たないため,階層構造の発生に向けてさらなるモデル構築が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に行った予備実験では頑健な構造を生むには至らなかった.これは決定論的な時間発展則を仮定していたことが原因と思われる.これに対し,生物進化や生体の情報処理ではノイズを伴う環境下において,そのノイズを有効に活用しているように見える.適切なノイズ下でのシミュレーションを行うことにより,安定な構造を抽出することができると期待される.研究の目的は今のところ達成できていないが,初年度の結果として有効な知見が得られたと考えている.また進化型シミュレーションの予備的なものを走らせる予定であったが,その前に解決すべき問題がみつかったため,その調査に時間を要している.単に乱数による突然変異を行うだけでは時間がかかり過ぎ,とても時間内に面白い現象に到達できそうも無い為,取りあえずは細胞の発生の歴史をなぞるべくシミュレーションを誘導する(境界条件を設定する)ことにしたが,そのために生物進化の歴史を少し詳しく調べている.
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今後の研究の推進方策 |
様々な形の進化型セルオートマトンをデザインし,多階層化への糸口を掴みたい.最初は作り込みによる誘導を行い,ひとたび階層の自動形成が見られた後一般化を試みる予定である.また上記のシミュレーション実験を有効かつ集中的に行うために学生(RA)の確保が必要である.
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次年度の研究費の使用計画 |
まず目的である,階層構造を形成できることを示す必要がある.そのためにどのような量に着目すればよいかということは自明ではなく,引き続きセルオートマトンのシミュレーション実験を行う.また,主に研究発表のために研究費を計上した.進化型シミュレーションも走らせたい.
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