研究課題/領域番号 |
23611027
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
中島 秀之 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 学長 (80344224)
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研究分担者 |
由良 文孝 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (90404805)
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キーワード | 多段階創発 / セルオートマトン / CFN |
研究概要 |
多段階の創発システムの実現を目指して研究して来た.昨年度(平成23年度)に新たに考え出したCFN(Complete Fractal Network)の考え方を精緻化し,これを2段階創発システムとして実現することを目指した.CFNは各階層で全く同じ構造を持つフラクタルネットワークであり,各階層のノード数KをパラメータとしてK-CFNと呼んでいる. これらのうちK=4の4-CFNは平面展開と相性が良いためセルオートマトンに1対1で変換できる.セルの簡単な書き換え規則を設定することによって4-CFNを2段階まで発生させることに成功した.最終的にはこの書き換え規則を進化計算で発見することを目指していたのだが,残念ながら存在証明までで時間切れとなった. ある程度の成果が得られたので結果を国内外で発表した.特にCFNに関しては単純な構造ながら上下両方向に拡大可能なネットワークとして新しい発見であることを確認した.CFN 同時に,セルオートマトン上における創発システムの実現に向けて,これまでにフラクタルネットワークの観点からシステムを考察してきた.本年度は,保存量を伴った力学系を実数体上から有限体上へ変換するシステマティックな方法を提案した.ここで有限体とは,有限個の元からなる四則演算の定義された体である.その結果,解として非自明なフラクタル構造が生じる系を発見および証明した.現在までに,素数3を標数とする場合に三分木(ternary tree)による入れ子構造(入れ子の深さは任意の自然数でよい)を持つことがわかっている.この系では解の衝突に際し,安定な構造を持つことも数値実験の結果わかっている.孤立波解それぞれが内部構造としてフラクタルを含有し,かつ,力学的な安定性を保有するこの系の,近可積分的な系への拡張はフラクタル間に相互作用を引き起こすと期待される.この点は当初予期しなかった萌芽的発展であり,多段創発に向けて今後の課題としたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
K-CFNというネットワーク構造を発見できたことは大きな成果である.これは単純な構造ながら上下両方向に拡大可能なネットワークとして新しい発見であることを確認した.4-CFNは平面展開と相性が良いためセルオートマトンに1対1で変換できる.セルの簡単な書き換え規則を設定することによって4-CFNを2段階まで発生させることに成功した.最終的にはこの書き換え規則を進化計算で発見することを目指していたのだが,残念ながら存在証明までで時間切れとなった. またセルオートマトン上における創発システムの実現に向けて,これまでにフラクタルネットワークの観点からシステムを考察してきた.保存量を伴った力学系を実数体上から有限体上へ変換するシステマティックな方法を提案した.孤立波解それぞれが内部構造としてフラクタルを含有し,かつ,力学的な安定性を保有するこの系の,近可積分的な系への拡張はフラクタル間に相互作用を引き起こすと期待される.この点は当初予期しなかった萌芽的発展であり,多段創発に向けて今後の課題としたい.
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今後の研究の推進方策 |
2013年度で終了予定のテーマであるから,今後は概念の整理が主となる.残った時間で4-CFNの創発を見ることは最早不可能であると考えているから,より現実的なセルオートマトン上での上下層の展開を見るに留めたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究開始当初は適切な博士課程の学生あるいはRAを実験に宛てる予定であったが,それが見つからなかったため,実験が実施できず,理論的研究に終止している.そのため人件費に宛てていた額が残り気味になっている. 理論的成果としては良いものが得られたと考えているので外部発表などを通じて内容を高めて行きたい.
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