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2012 年度 実施状況報告書

乾漆を応用した炭素繊維漆コンポジットの制作工程の最適化と構造材料としての強度試験

研究課題

研究課題/領域番号 23611028
研究機関宮城大学

研究代表者

土岐 謙次  宮城大学, 事業構想学部, 助教 (20423783)

研究分担者 金田 充弘  東京芸術大学, 美術学部, 准教授 (00466989)
キーワード乾漆
研究概要

平成24年度は、前年度からの「構造材料としての強度試験」を行った結果、おおよそ一般的な木材と同等の物性的性質が確認された。これは骨材を麻布などの面材とした構造物の場合であり、骨材が線材である場合の物性を探ることとした。具体的にはたこ糸(綿材)程度の繊維がどの程度の大きさの構造物を構成しうるか、について実証的に検証することとした。直径3mm程度のたこ糸に漆を含浸させ、木型に配置することを繰り返すことで網目状の三次曲面を形成した場合に、自立する可能性を探ることとした。また、その結果、得られた直径1700mm、高さ705mmのドーム状の自立構造物を中心に民間の展示会場にて一般公開する展示会を企画・実施(東京および仙台)した。http://www.geidai.ac.jp/labs/kanada.std/proj/1202_urushi/1202_urushi.html
http://www.geidai.ac.jp/labs/kanada.std/
骨材を線材とする研究課題は、当初計画にはなかったものではあるが、制作工程の最適化を行う上で、より柔軟な造形の可能性を広げるものであり、また、その設計段階ではアルゴリズムデザイン手法と制作段階ではデジタルファブリケーションを採用したことにより、工芸的な技術の一般化・普遍化に繋がる可能性が見いだせたことにより、意義あるものと考える。また、現在までの研究成果を「構造実験に基づいた乾漆造形手法の研究」と題した論文にまとめ、Designシンポジウム2012にて発表(査読あり)した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

炭素繊維漆コンポジットの強度実験により、圧縮・引っ張りの強度特性に極端な差があることも判明した。乾漆との比較において引っ張り強度については漆の影響はほとんど見られず、その大半を炭素繊維に依存していることが判明した。このことから、より引っ張りに強い特性を探るため、天然素材の骨材の織り方や積層方向の検討が必要となった。
また、板状に成形した際に見られるFRP板のような靱性・弾性のある素材特性を発見した。これは二次元的な造形と共に、ひねる、曲げる、といった靱性・弾性を活かした二次元を元にした三次元的な造形が行えるということであり、乾漆による造形の新たな可能性を広げるものである。
上記のように、乾漆を研究対象として取り扱う過程において、当初予測されなかったものの、有益な素材特性が発見され、研究対象として新たな課題が発見されたことで、研究内容が充実しつつあり、総合的におおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

計画どおり、25年度は構造材料の強度試験を継続して行う。これまでに得られた結果の精度向上のため、実験体のバリエーションを増やし、より精密に実験を行う。具体的には同じ仕様の複数の実験体に対して熱処理の有無、および、自然硬化時間の長短による強度への影響を調べる。
一方、炭素繊維漆コンポジットについては、その引っ張り強度のほとんどを炭素繊維のみに依存するため、コンポジットとしての漆の有効性が発揮されていないことから、本研究では、天然繊維と漆の乾漆の強度試験に重点をおいて、将来的な知見を積み上げることに注力することとする。
また、現在までの研究成果を日本デザイン学会(6月)および日本建築学会(8月)にて発表する。
板状に成型した乾漆の靱性・弾性を活かした造形手法を広く紹介するための公開講座を6月に東京藝術大学にて開催するなど、乾漆の造形手法を広く告知する活動も予定している。

次年度の研究費の使用計画

最終年度は強度試験の精度向上のための資材購入、研究・実験施設の整備、上記公開講座開催の経費・旅費等も見込んでいる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] 構造実験に基づいた乾漆造形手法の研究2012

    • 著者名/発表者名
      土岐謙次、金田充弘、尾関美紀
    • 雑誌名

      Designシンポジウム2012講演論文集

      巻: 1 ページ: pp207,pp211

    • 査読あり
  • [学会発表] 構造実験に基づいた乾漆造形手法の研究2012

    • 著者名/発表者名
      金田充弘
    • 学会等名
      Designシンポジウム2012
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20121016-20121017
    • 招待講演
  • [産業財産権] 腰掛け2012

    • 発明者名
      林映里
    • 権利者名
      土岐謙次ほか3名
    • 産業財産権種類
      意匠
    • 産業財産権番号
      1460759
    • 出願年月日
      2012-03-01
    • 取得年月日
      2012-12-28

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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