本研究では、漆で造型を行う伝統技術である乾漆に注目した。型を利用する工程のうち特に離型処理において簡便な手法を開発した。また、その構造材料としての強度実験を通して乾漆のもつ構造特性(強度・剛性) を定量的に把握することができた。実証実験としての乾漆による椅子の制作では、CADの導入により工芸的手法に設計の概念を導入することで、これまで職人の経験と勘に頼ってきた乾漆積層技術を規格化・一般化し、作業従事者固有の技術的特性に依存しない安定した乾漆製品を製作するためのガイドラインを制作することで伝統的な工芸技法としての乾漆のイメーシを素材の構成技術として捉えなおす機会となった。
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