研究課題/領域番号 |
23611039
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
諏訪 正樹 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (50329661)
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研究分担者 |
筧 康明 慶應義塾大学, 環境情報学部, 准教授 (40500202)
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キーワード | 身体知 / ことば化 / オノマトペ / 構成論的方法論 / インターメディア / 触覚 |
研究概要 |
本研究は”身体を考える”という行為を提唱し,その行為を習慣化することによって,身体に根ざした生活意識を芽生えさせるための支援環境を構築するものである.生活行為のドメインとして,様々な地面を歩く際に生じる体感をオノマトペによりことばにし,散歩道に足音オノマトペ地図を製作するという生活行為を選定した.今年度は以下の要素研究に取り組んだ. 第一にオノマトペで体感をことば化することの,生活におけるフィージビリティを検証するため,昨年度開発したオノマトペ表現プラットフォームを利用した生活実証実験を行った.研究代表分担者及び学生による実験により,個性豊かな体感が表現できることが明らかになった. 第二に,歩く際の足音/振動の物理データのリアルタイム解析と,体感のオノマトペ表現を紐付けてデータ蓄積するインターメディアの制作実装を終え,生活のなかで歩行実験を繰り返した.本人の感性にあうオノマトペデータベースが次第に構築されているかどうかの検証アルゴリズムを考案し,その実証実験に着手した. 第三に,生活者の生活意識やコミュニティ意識を,定型の語り口を破って掘り起こし,同じコミュニティに住む/働く生活者のあいだで共有するコミュニケーション場のデザインにも着手した.本研究は散歩を題材にして,歩く道に対する体感を個人個人が意識し磨くことを試みているが,それはコミュニティー意識の醸成につながる.したがって,この第三要素研究は,被験者間で生活意識を共有するためのコミュニケーションデザインである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実ドメイン(散歩の体感をことば化するシステム)の制作も終え,まだ大学キャンパス内での使用に留まってはいるが実証的使用のフェーズにあるため,ほぼ順調に研究が進んでいると考える.生活におけるコミュニティ意識を共有し互いに触発を促すコミュニケーション場のデザイン手法も蓄積されつつあり,上記システムを生活で実際に使用し始めたときに複数のユーザーが醸成するコミュニティ意識を共有する準備は整っている.
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今後の研究の推進方策 |
散歩の体感をことば化し,体感とことば化の身体メタ認知を促すシステムを生活の文脈で使用し,複数被験者が体感をデータベースとして蓄積する実証実験を本格的に行う. また生活の文脈で本システムを使用することを通じて,様々な道への意識や,異なる道がつくりだす環境への意識が高まり,コミュニティ意識の醸成にどうつながるかに関する意識調査を行う. 更に,各人のデータベースを可視化する形で互いの体感を共有し,コミュニティ意識の共有が生活文脈でどのように触発につながるか,それがどのように各個人の道への意識や歩き方に関する意識の変化をもたらすかを実証実験する.
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次年度の研究費の使用計画 |
まず次年度の使用する研究費が生じた理由を述べる.実際のまちで,生活の文脈のなかで本システムを使用しデータを取得する要素研究は,申請時には平成24年度に行うはずであった.生活文脈で本システムを使用し実証実験を繰り返すフェーズには,生活文脈を邪魔しないシステム構成やアルゴリズムの再構成が必要になることが予想され,そのための(システム再構成の)研究費がかかる. しかしそれは平成25年度に集中的に行うことにして,平成24年度には,コミュニティ意識を共有/交換するコミュニケーション場のデザイン手法を確立することを済ませて置く方が得策であると判断した.したがって,生活文脈での実証実験に伴うシステム再構成にかかる研究費は,平成25年度に使用することにした. 次に次年度の使用計画を述べる.生活文脈での実証実験に伴うシステム再構成のために物品費(消耗品費)を使用する.また,生活文脈で体感を語ったり,コミュニティ意識を語るインタビューを生活被験者に依頼するため,謝金費を使用する.またコミュニティ意識を共有するコミュニケーション場のデザインの補助業務として主に大学院生をアルバイト雇用するため,謝金費を使用する.また,システムの実装と実証実験の結果を学会発表するためと,及び,コミュニティ意識を醸成するためのワークショップを実践するために,旅費を使用する.
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