研究課題/領域番号 |
23611041
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
須永 剛司 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (00245979)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | デザイン学 / 情報デザイン |
研究概要 |
次世代デザインとはデザイン対象を「モノ」から「コト」へ拡張することである。本研究の目標は「コトのデザイン」の枠組みを構築し、そこからコトのデザインを学ぶ教育カリキュラムの研究開発である。研究方法として、カリキュラム研究とそのカリキュラムによる学習実践を一体化し、両者を循環させるアプローチをとっている。平成23年度は、1.コトのデザインを主題とする「学際ワークショプ」の実施、2.体験したデザイン学習のふり返り、3.デザイン学習のモデル化を実施した。 1.学際ワークショプとして実施したのは、デザインの専門分野(情報デザイン、建築など)からデザインに関心をもつ他分野(情報システム、認知科学など)まで幅広い分野が参加する、コトのデザインを恊働的に学ぶ学際的デザインワークショップである。2.デザイン学習のふり返りでは、デザイン分野の学生たちが、参加した学際ワークショプと、各自が所属する大学でのデザイン学習体験をふり返ることから、それらを比較しそれぞれの学びの特性について比較研究をおこなった。3.合わせて、 学び手の参加するカリキュラム研究の試みとして、コトのデザインを学ぶ活動のモデル化を試みた。 これらの活動から見いだされたのは次の3点である。(1)教育の受け手である学生が参加することで、教師と学生が恊働してカリキュラムについて議論することが可能である。(2)カリキュラムの議論は、学生にとって自分たちの日常的な学習をメタ認知する機会をもたらした。(3)そのメタ認知が、彼らの本来のデザイン学習を深化させる可能性があること。 これらの発見は、カリキュラム研究とそのカリキュラムによる学習実践を一体化する、本研究のアプローチによって導出されたものと考えることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度では、次の3項目が順調に実施された。1.コトのデザインを主題とする「学際ワークショプ」、2.体験したデザイン学習のふり返り、3.デザイン学習のモデル化 具体的には、1項の活動として、平成23年度日本デザイン学会春季大会のプログラムとして「現在(いま)を記述する試み ―博物館で未来をめざす」をテーマに2日間のワークショップを実施した。9つの大学、4つの分野(情報デザイン、情報システム、建築、認知科学)から49名の学生、8名の教員が参加した。2、3項の活動は、本研究のメンバーと各研究室に所属する学生などが恊働し、研究合宿として9月、11月、3月に実施した。研究メンバーが所属する4つの大学から、9月17名、11月20名、3月17名の学生が参加している。 また、本研究のメンバーが主体となり平成24年度人工知能学会全国大会のオーガナイズドセッション「コトのデザイン」を企画し、成果の発表と議論の場を設えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、海外の大学からメンバーを招聘し「国際ワークショプ」を実施する。複数の異なる「文化」が交流する場を設け、その中でグローバルなデザインの学びが起きる実験的なカリキュラムを開発し実施する。そこから異なる文化における「コトのデザイン」の共通分母を探ることから、異文化を文脈とする「コト」の意味と価値を創出し交換するカリキュラムを開発する。平成25年度は、それまでにおこなった実践と開発のループから見出された知見を、「コトのデザイン」の方法と理論に統合し、デザインの技と知にするカリキュラムとして開発し、それをまとめる。加えて「コトのデザイン」をテーマに、異なる研究分野が国際的に連携する次世代デザイン大学院のカリキュラムとその運営プログラムを展望する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費が生じた状況は次のとおりである。研究実績として報告したとおり、当該年度の中途で、学生を本研究活動に参加させることが成果を深化させる重要な方策であることを見出した。これを受け、当初計画していた当該年度の謝金として計上していた費用を次年度の旅費(主に学生)に充てるために繰り越すこととした。なお、上記を含め、平成24年度の研究費は主に次の研究活動にかかるものとする。・学会での研究発表にかかる旅費交通費および発表費・国際ワークショップの実施運営にかかる諸費用。海外の大学から招聘されるメンバーの旅費、参加メンバーの国内旅費、ワークショップで使用する画材や機材など。・研究合宿にかかる旅費交通費
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