研究課題/領域番号 |
23611042
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
戸井 武司 中央大学, 理工学部, 教授 (90286956)
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研究分担者 |
ジョ ワン ホウ 中央大学, 理工学部, 助教 (60580058)
古屋 耕平 中央大学, 理工学部, 助教 (40580056)
吉川 茂 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (80301828)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ガウディ・ベル / 衝撃応答 / ピッチモデル |
研究概要 |
サクラダファミリア教会におけるガウディ・ベルは,1つの鐘に2以上の音階を持たせ,また鐘楼と鐘を合体させ1つの巨大な楽器にするという構想である.そこで本研究では,衝撃入力および応答を解析する方法について考察し,ガウディ・ベルの実現とベル音楽を奏でるための音階を構成する具体的な設計方法の確立を目指している. 平成23年度には鐘の設計に適用できる理論を検討し,鐘の応答との関連性を把握した.数値シミュレーションを用いて構造の共振周波数および振動モードの予測,入力による衝撃応答の変化把握,ピッチ基盤の認知モデルの検討を行った.また,多様な形状の鐘の測定を行い,衝撃入力と応答間の関係を把握した.現在のガウディ・ベル基本形状は,両端に開口部を持つ長い円筒型で長手中央部が細い形としている.この基本形状に対して,開口部を異なる大きさの円型,楕円型,また開口部を帯状にカットしたサンプルを製作して,衝撃応答を測定し,数値シミュレーションで予測された共振周波数とほぼ一致することを確認した.それに加えて,加振位置等の入力の変化による影響も検討した. 聴覚の認知特性を考慮した音響設計のためにピッチモデルを検討し,位置理論(placement theory)による音の分析を実施した.ピッチ計算モデルでは,他に時間理論(temporal theory)もあるが,鐘はモジュレーションのような時間軸で変化が続くものではなく,打撃時に一瞬で複数のピッチが同時に発生する音であるため位置理論の方を適用する. 研究内容の一部は,平成24年5月の国際学会(ACOUSTICS 2012, Hong Kong)で発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の達成度は,全体の凡そ30%であり,予定通りに進んでいると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究目的は,平成23年度に検討した設計関連理論に基づき,鐘と音階のデザイン方法を確立することである.音響応答と設計因子間の関係に基づいて,構造の設計法を提案する.また,その検証のため複数の実験モデルを製作し,共振周波数および振動モードを測定する.一方,鐘本体だけではなく,入力の制御により特定の周波数を選択的に加振できる加振ハンマーも設計する.また,音階の設計では,ピッチ認知モデルを適用する.これより,周波数上での判断でははく,聴覚の認知面で明確に聞き分けられる音として,心地良い音階を提示する.さらに,室内音響シミュレーションを利用し,鐘楼の音響特性を把握し,適切なベルの出力について検討する. 平成25年度は,設計に基づいた鐘を製作し,評価を行う.鐘の形状は,現在のガウディ・ベル基本形状をできるだけ維持する方向で,実物の製作を行う.ベルは低音域用ガウディ・ベル,聴覚感度帯域用ガウディ・ベル,および高音域用ガウディ・ベルをそれぞれ数本ずつ試作する.試作品は年度前半で製作し,後半は試聴実験用の音響データを無響室で取得し,試聴実験を行う.その実験結果を分析することにより,提案した鐘と音階のデザイン方法の有効性および信頼性を確認する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は数値シミュレーションおよび所有している鐘を用いた検討を行ったので,繰越金が発生した.平成24年度は測定に使う実験モデルの製作を計画している.構造物は鐘を吊るフレームとマイクロホンアレー設置用フレームがある.それに加えて,多様な衝撃入力を与えるための加振装置も製作する予定である.また,ピッチ基盤設計を検証するためのサンプルを製作する.また,実験過程で必要に応じてセンサーを購入する予定である.それ以外に,国際旅費の支出として,研究結果発表のため国際学会(Acoustics 2012, Hong Kong)への参加を予定している.
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