研究課題/領域番号 |
23611044
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
伊藤 泰彦 武蔵野大学, 環境学部, 准教授 (40515095)
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研究分担者 |
稲山 正弘 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70337682)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | バイオミミクリ / 木質構造 / 空間デザイン / 立体造形 / 多重螺旋 / 松かさ |
研究概要 |
本研究では、松かさ観察による多重螺旋配列の平面表記法の考察から、新たな空間デザインを探求している。形態分析・プログラミング・実空間の制作・形態的評価の4つの手順で進む。平成23年度は、平面表記で得た多重螺旋配列を3次元サーフェイスに転写し、木質構造のドームを制作した。研究成果は、展示・学術研究発表で逐次公開している。はじめに、研究・制作の過程を記す。松かさの全体形状を参考に、甕形の立体サーフェイスに先の配列パターンを転写した。その配置を基に、ドロネー図・ボロノイ図を描く。ドロネー図の線と余白の図と地を反転し、互いに隙間のあるパネル面を構成する。パネル間をT字型ジョイント材で繋ぎ、パネル外殻にボロノイ分割された空間領域を描く計画である。パネルに構造用合板、T字型ジョイント材に集成材を採用し、面積約15m^2・高さ約3mの実作品を制作した。次に、本作品の特徴を記す。(1)多重螺旋配列の形態特性:球体上の多重螺旋配列の各点は、ほぼ近似的に等しい領域(面積)を構成し得る。ネットワークと領域を象徴した、多重螺旋の構成とした。(2)全体性としなやかさを有する木質構造:構造体自体が空間をカタチづくり、部材全てが相補的な構造を成す。(3)再生可能なセルフビルドの空間:荷重による変形や施工誤差を考慮した部材の相欠き加工、インパクトドライバーのみで行う現場での組み立て、再利用可能な解体の手順を実践している。(4)環境に呼応する空間性:部材間のスリットが風を誘導し多重螺旋の光を呼び込み、夜間は周囲の敷地に多重螺旋の光と影を描く。また、次の段階への準備を進めた。先の多重螺旋配列を、正円・円錐・半球・円筒にプロットし、領域とネットワークという観点で比較した。ここで、正円から円錐に至るシームレスな形態変化に焦点を絞り、ゼンマイばねを用いて動きのある立体造形を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画は、第1作目の実作品の制作・評価である。第1作の制作を終え、第2作目の制作準備を始めている点は、予定以上である。また、形態評価方法の妥当性の検証も行った。当初、照度・表面温度を評価軸としていたが、部材形状や仕様の影響が大きく、妥当性に欠く。形態特性にダイレクトにつながる評価・考察の方法を検討することが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
実空間の制作と評価を繰り返す研究である。初年度(平成23年度)は、制作に注力し、予定以上の成果を得た。一方、その評価方法の確立が課題であり、複数の実作を比較検証する中で、この課題に取り組んでいく。
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次年度の研究費の使用計画 |
まずは、形態特性に焦点をあて動く立体造形の実験装置を制作する。これが、形態評価の切り口になると考えている。そのうえで、第2作目となる木質構造建築の制作に取り組む予定である。
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