研究課題/領域番号 |
23611045
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
真保 晶子 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 助教 (50578474)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | デザイン / 近代イギリス / リサイクル文化 / 消費文化 / 家具修理 |
研究概要 |
本研究は、今まで家具・住宅史の中で注目されてこなかった家具の修理とリサイクルの歴史に焦点を当てる。いわゆる「産業革命」といわれる工業化の進行した時期、18世紀後半から19世紀前半のイギリスでは、生産者と消費者が、家具を長く使い続けるとともに、長期間使い続けられるデザインを共同で考え実行していた。これらの実例をもとに、現代社会におけるリサイクルとデザイン、そして生産者と消費者の関係の在り方を考えるための新たな視点を提示することが本研究の目的である。 1年目にあたる2011年度では、18世紀から19世紀イギリスの中古市場・リサイクル文化についての他分野を含めた関連研究の分類と分析を行なった。近年、この分野が注目され始められた例として、John Stobart and Iija Van Damme (2011), Second-hand Trade: European Consumption Culture and Practices, 1700-1900が挙げられる。Margaret PonsonbyとClive Edwardsの共著による中古家具についての1章もこの本に含められている。現在、これら関連文献とその論点の整理についての研究動向を学術雑誌に投稿するための準備を行なっている。 また、現代のデザイン学と消費文化論において、「中古」や「リサイクル」という概念はどのように捉えられているかについても、理論研究の参考にした。中でも、デザイン学において、近年再び注目を集めているV.パパネックの『生きのびるためのデザイン』(1971年)を再検討した。これについての詳細は、研究ノートとして発表した、成果の一部、真保晶子「V.パパネック『生きのびるためのデザイン』(1971年)再考」(早稲田大学『早稲田社会科学総合研究』、第12巻 第3号、2012年3月)を参照されたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の概要に挙げたほか、トレード・カード(初期の業務紹介広告)をもとに、1750年-1850年の期間のイギリスの家具メーカー全体の中で、どれくらいの割合が、中古や修理を扱っていたかを概観するために、データを作成する準備をしている。これについてはまだ準備段階にとどまっているが、この成果についても、順次経過報告を雑誌に発表していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる次年度は、18世紀から19世紀のイギリスを代表する家具メーカー、ギロウの書簡から、家具・インテリア製品の修理の相談、古いものを利用して作り直す相談、中古家具の紹介・譲渡などリサイクルに関わる事例を分析する。これらをもとに、工業化の時期にあたる18世紀後半から19世紀前半のイギリスで、長期的に使い続けられるものというデザインの概念が、生産者・消費者の中に存在していた事例を示し、デザインの意味を現代において新たに捉え直すことをめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、上記資料について、ロンドンの資料館において現地調査を行なうための旅費支出が中心となる。 また、その準備と途中経過執筆に関わる書籍・消耗品の購入費、人件費(研究補助者による資料整理賃金、英語論文校正謝金)の支出を予定している。
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