研究課題/領域番号 |
23611045
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
真保 晶子 武蔵大学, 人文学部, 助教 (50578474)
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キーワード | デザイン / 近代イギリス / リサイクル / 消費文化 / 家具修理 |
研究概要 |
今年度現地資料調査で得た主な点は以下のとおりである。 1 ブリティッシュ・ライブラリーとナショナル・アート・ライブラリー(ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム)(1)18世紀後半から19世紀前半の刊行本を幅広い分野から閲覧・研究し、「修理」・「中古」に関する当時の意識を探った。(2)同目的のため住宅と調度品に関わる18世紀後半から19世紀前半のオークション・セールスカタログを閲覧・研究。(3)同目的のため、主に19世紀前半の刊行本、家政手引書のジャンルから当該記述を探索・研究。(4)上流階級の顧客による修理に関する請求書などを閲覧・研究。 2 ウェストミンスター・シティー・オブ・アーカイヴズ(1)家具メーカー、ギロウ社の見積もりスケッチブック(1784-1855年)のうち、いくつかサンプル年を選び出し、修理の状況を調査した。(2)家具メーカー、ギロウ社の注文帳(1758-1762年、1778-1781年、1800年、1822-1825年)のうち、1781年と1824年をサンプル年として修理への言及を調査した。(3)さらに上記(2)で注文した顧客がいつその品を購入したか見積もりスケッチブックにたどろうとしたが、不明に終わった。(4)ギロウ社の書簡集(1769-97年、1800-1803年、1829-1842年)から1784年をサンプル年として調査し、ギロウ社から顧客へ送付された修理に関する2通の手紙を発見した。 その他: トレードカード(業務紹介広告)の保存と家具修理の関係性についての分析 歴史学会シンポジウム「図像史料と歴史学」(2013年12月)で発表の機会をいただき、トレードカードの保存と家具修理の関係性についても考える機会を得た。 上記調査「2」の一部および「その他」については、歴史学会『史潮』第75号(2014年5月刊行予定)掲載の論文に含めた(現在印刷中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は任期3年間の助教の仕事を得て、新しい大学へ移り、新しい授業の準備や運営に慣れるのに時間がかかった。また、本研究の基盤であり出発点であった博士論文を単行本として出版するための最終修正が思いのほか長引いて今年度までずれこんでしまったが、やっと完了した。結果として、夏に行なった現地調査では収穫があった一方、本研究課題のまとめに費やす時間をあまり多く取ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1 現地調査第2回目(2014年夏) (1)現地調査第1回目の最終日にナショナル・アート・ライブラリーで閲覧・研究した住宅と調度品に関わる18世紀後半から19世紀前半のオークション・セールスカタログをさらに調査する。中流の上層クラスの人々の死後、競売にかけられた調度品のリストから言えることを分析する。(2)ブリティッシュ・ライブラリーとウェストミンスター・シティー・オブ・アーカイヴズでの第1回目からの続き 2 研究のまとめ(調査終了後の夏から冬にかけて) 次年度は新しい職場で2年目になり、日常業務にも慣れるため、本研究課題に費やす時間を多く取れる。特に授業のない長期休暇期間には集中して本課題のまとめに取り組むつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地調査が当初予定していたよりも日程の都合上長く取れず、また今回の調査結果を一旦整理し直し、補足すべき点の準備をしてから新たに第2回目の調査に臨んだ方が効率的に課題を遂行できると判断し、翌年度に延長し、第2回目の出張を行なう。これにより研究のまとめも遅れたため、研究補助への依頼も翌年度に継続して行ないたい。 以上の理由により、現地調査第2回目と研究補助依頼の継続を次年度に行なうこととし、未使用額は主にその経費に充てることとしたい。
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