研究課題/領域番号 |
23611053
|
研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
安藤 敏彦 仙台高等専門学校, 情報システム工学科, 准教授 (00212671)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | コミュニケーションデザイン / 演劇 |
研究概要 |
本研究は(1)人工物の開発、(2)人工物と俳優が共存する演劇の制作、(3)俳優と人工物の総合作用の分析を通して、人と人工物との共存のためのコミュニケーションデザインについて検討を行っている。当該年度は(1)の人工物の開発を行うとともに、動作解析のための環境構築を行った。 人工物としてロボットと仮想環境上のアバタの開発を行っている。ロボットとしては人型と球形の2種を開発している。人型ロボットについては、ロボットの実装とともに、俳優の行動に対応する動作を生成するための動作記録システムの開発を行った。このシステムはKinectセンサを用い、人の動作をコンピュータ上に記録することができる。これによって、複雑な動作設定が不要となり、簡単な手続きで動作を登録させることができるようになった。現在はPCによる遠隔制御を行っているが、スマートフォンとの組み合わせでロボットの自動制御も検討している。 また、スクリーン上に投影されたアバタが人の行動に滑らかに応答できるように、協同パントマイムを行っている人々の動作をARモデルを用いて分析した。その結果、簡単な動作であれば人がするのと同じようなタイミングで応答させることができることが明らかになった。今後、このモデルをアバタに実装する。 さらに、劇場での動作解析を行うための環境の開発を行っている。実験室とは異なり測定が困難な劇場で簡便なモーションキャプチャシステムが必要になる。当該年度ではKinectセンサを用いたモーションキャプチャシステムの開発を行っている。正確な測定のため、Kinectの開発システムに収録されているモーションキャプチャライブラリは用いず、センサに搭載されている赤外センサとビデオカメラの組み合わせで効率的な画像抽出法を開発できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の実施計画は人工物の開発であった。人工物としてロボットおよびアバタを計画しており、ロボットについては人型、動物型、自然型、抽象型の4種を作り、アバタについては人の動作に対して適正な時間遅延で応答する機能を実装することが目標である。 現時点では人型ロボットの実装がほぼ終わり、今後、どのような動作がよいか検討する段階になっている。また、抽象型ロボットとして球形ロボットを開発しており、これについてはまだ組上げに至っていない。当初、動物型も検討したが、動物の種類や動作、外装の材質など、検討すべき課題が計画時よりも多いことが分かり、上記2種に絞って開発を進めた。余裕があれば動物型の開発に着手したい。 また、アバタヘの応答動作の実装については、ARモデルを利用して複数の人が実際に行っているパントマイム動作のモーションデータを分析し、シミュレーションでは簡単な動作について再現できることを確認した。目標は、アバタに実際に実装することであったが、分析データが多く処理に時間がかかったことと、アバタの開発環境の導入が遅れたことで当該年度で終了できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も人工物の開発に力を注ぎ、人型および球形ロボットの実機およびアバタの開発を急ぐ。次年度の前半での完成を予定している。その後、まず実験室段階で、人工物の対人動作について検討する。人に対する人工物の動作については、(1)1対1における応答のタイミング、(2)1対1における応答の方向・姿勢、(3)集団における相対位置による応答の修正の順に調査する予定である。現時点では非言語コミュニケーションが主であるが、簡単な音声での応答も考慮する。タイミングを加味した動作生成は、ロボットの場合は単純なトリガ駆動であるが、アバタの場合にはARモデルの結果を用いて行う予定である。 上記(1)の1対1における応答のタイミングについて方向性が決まった後、俳優との即興練習を行い、ロボットやアバタの反応に俳優がどのように対応するかなど、ビデオ撮影やモーションキャプチャによるデータ収集を行う。即興練習では俳優に特別な教示をせず、率直な反応を観察する。俳優の人工物への接近の仕方、距離の取り方、人工物の反応の違いによる俳優の対応の違いを中心に分析を行う。 次年度後半には、この即興練習の結果をもとに上演台本を作成し、演劇公演の製作を行う。複数の人工物に対して同じ状況を設定し、それぞれの社会的関係の実現性、妥当性について観客の視点から評価してもらう。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究は(1)人工物の開発、(2)人工物と俳優が共存する演劇の制作、(3)俳優と人工物の総合作用の分析を通して、人と人工物との共存のためのコミュニケーションデザインについて検討を行っている。次年度では引き続き(1)の人工物の開発を行うとともに、(2)の俳優と人工物の即興練習、演劇公演の製作を行う。 人工物の開発においては人工物の実装に必要な部品類の購入に充てる。 次に、俳優と人工物の即興練習については、即興練習を5回程度行い、その様子を観察する。そのため、協力してもらう俳優への謝金および練習場の会場費に研究費を充てる。 また、演劇公演の製作においては、2ヶ月程度の俳優の稽古と2日間の上演を計画している。会場は100名程度入る小劇場を予定している。そのため、研究費を稽古のための会場費、上演会場の会場費、俳優への謝金・技術料、音響、照明、舞台監督等の舞台スタッフによる技術協力への技術料、公演告知のための諸経費に充てる。 その他、国内での研究発表のための旅費を計上する。
|