| 研究課題/領域番号 |
23611053
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| 研究機関 | 仙台高等専門学校 |
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研究代表者 |
安藤 敏彦 仙台高等専門学校, 情報システム工学科, 准教授 (00212671)
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| キーワード | コミュニケーションデザイン / 演劇 / キャラクター造形 |
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| 研究概要 |
本研究は、今後予想されるロボットなど社会的人工物の人間社会への普及とともに問題となるだろう人-人工物間の社会的共存のあ り方を演劇の手法をもって探求することが目的であり、(1)ロボット等の人工物の開発、(2)人工物と俳優が共存する演劇の制作 、(3)俳優と人工物との相互作用の分析を通して、人と人工物との共存のためのコミュニケーションデザインについて検討を行って いる。当該年度は、(1)の人工物の開発を完了し、(2)の演劇の制作を行う予定であった。しかし、２つの問題によって(2)には至らなかった。これについては、「達成度」でも報告する。
当該年度では、(1)は概ね終了し、(2)のための予備実験として、モーションキャプチャで人の動作を記録、再生できるタイプのロボットを用いて、挨拶程度の会話を行う2人の俳優の動作をモーションキャプチャし、その動きをロボットに適用させてみた。ところが、予備実験中の俳優へのインタビューで、人の動きをそのままロボットに移しても、そのロボットらしい動きに見えないというコメントがあった。そこで、次の予備実験として、俳優に、モーションキャプチャしながらリアルタイムでロボットを操作してもらうと、ロボットのモーター速度や取付け角度などの物理的制限や、ロボットの外見などから、ロボットのキャラクターに合わせた動作をするようになった。すなわち、ロボットと直に接する人から見れば、そのロボットの外見、動作，音声などの整合性が重要であることが分かった。そのため、次の課題として、ロボット動作のキャラクター性について検討する必要が生じた。
また、出演予定の俳優の別の公演の出演が決まったこともあり、(2)の演劇公演を今年度中に行うことはできなかった。その代わり、上記のロボットのキャラクター性の検討を行うとともに、(3)相互作用の分析で使用するための環境構築を先に行った。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度では、当該年度は、(1)の人工物の開発を完了し、(2)の演劇の制作を行う予定であった。(1)は概ね終了し、また、(2)のために俳優とロボットの間の相互作用について観察等フィールドワークやそれに関わる実験を行い、その知見をもとに、俳優とロボットとが共演する演劇公演の制作を行う予定であった。ところが、「研究実績の概要」でも触れたが、２点の理由のため、演劇公演の制作には至らなかった。
まず第一は、俳優とロボットとの相互作用を行う予備実験を行った際に、モーションキャプチャで取得した人の動作がそのままロボットに適用できないことが判明したことである。本研究の計画当初は、人とロボットの動作の違いについて、それほど重要視していなかった。そのため、人の動作を人型のロボットに適用しても十分有効であると考えていた。しかし、実際に行ってみると、(a)人の動作速度が速くモーターが追従できない、(b)人の動作が細かく、ロボットの自由度ではそれを表現しにくいなど、ハードウェアの問題に加え、そのロボットの外見から想像される動きに合わない場合、人が当惑を覚えることが分かった。そのため、ロボットの「キャラクター」をどのように作り出すべきか、改めて検討する必要が生じた。
第二は、出演予定の俳優のスケジュールの問題である。研究協力者である俳優が別の舞台に出演することになり、期間内に演劇公演を行うことができなくなったためである。
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| 今後の研究の推進方策 |
本年度は、元々の計画を変更し、大掛かりな演劇公演の制作の代わりに、「達成度」で述べた新しい課題であるロボット等人工物のキャラクターについての検討に注力する。そのために、(a)俳優の協力によるキャラクターと動作の関係についての精査、(b)それと並行して、家電製品のような人型ではない形状を持った人工物を使い、「物らしい」人工物に対しそれにふさわしいキャラクターを与え、人との相互作用を促進できるかどうか検証する。
(a)では、俳優に様々な動作を数段階の感情の大きさレベルで行ってもらうことで動作のカタログを作り、それを被験者に見てもらい、その結果をもとに、動作を構成する基本軸を導き出す。顔の表情では、「覚醒の高-低」、「外部への開-閉」、「肯定-否定」の軸で分類できるという関連研究があり、本研究でもそれと同様の分類ができることを見込んでいる。
また、(b)では、ポット型のロボットを開発し、人からロボットへ、ロボットから人への双方向の働きかけができるようにした上で、ポット型ロボットにふさわしいキャラクターを造形するための動き方の検討と、人との相互作用への効果について調査する。
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| 次年度の研究費の使用計画 |
「達成度」で述べた人工物のキャラクターと動作の不整合の問題が生じたことから、当初の予定である演劇公演の制作に至らず、その代わりに、ロボットの「キャラクター」をどのように作り出すべきかを改めて検討する必要が生じたためである。人と社会的に相互作用する人工物の存在が、将来、日常的になる状況があるとしても、その人工物が必ずしも擬人的に振る舞うとは限らず、その人工物にふさわしい姿を人の方で要求するだろうことが、予備実験をへて明らかになった。すなわち、人と物との間の中間の存在として振る舞う場合、それを決定する要素を明らかにする必要がある。
数名の俳優に協力を請い，「今後の研究の推進方策」で述べた、様々な動作を集めた動作カタログの制作を５月から開始する。今年度の助成金はその際の謝金として使用される。これによって制作された動作カタログを、キャラクターの動作の印象を評価する実験のために使用する。
可能であれば、上記の実験で得られた知見をもとに得た動作をロボットに適用し、俳優とロボットとの相互作用の観察を行い、前年度から構築を始めている分析環境を用いて分析を行いたい。この分析環境は、Kinectセンサや俳優および観客の身体に取りつけたスマートフォンからのセンサデータをサーバに集積して、それらのデータの相互比較を可能にするためのものである。
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