本研究は、人と自律的に動く人工物とが社会的に共存できるためのコミュニケーションのデザインを考えるため、その実験として、人工物が俳優と対等な関係で舞台上に存在する演劇作品の創造を行う。その創造過程を通し、人工物が俳優や観客に行動を起こさせるような「引き算」としてのデザインの成立条件を、身体性の観点から明らかにすることを目的としている。 当初の研究計画では、(1)自律的人工物の製作、(2)人工物と俳優の相互作用の分析、(3)自律的人工物を導入した演劇創造、(4)演劇創造における、俳優・人工物間の相互作用の分析、観客の反応の分析、の段階を追って進める予定であった。ただ、当初はモーションキャプチャで獲得される人動作をほぼそのまま人工物に適用する予定であったが、人工物に適用する際、人工物のキャラクタと適用動作の違和感の問題が発生し、現在、キャラクタと動作の関係に視点を移して研究を進めている。特に、感情の次元モデルを適用して動作生成を行う方向で進め、様々なキャラクタの間の相互変換 最終年度では、感情を表す動作を人工物で実現させるため、俳優やダンサーに協力を得て、人の感情動作(全身)を収集した。これらの感情動作は、被験者への提示をもとに、Russelの「快-不快」、「覚醒-睡眠」の2次元に配置され、感情を2次元のパラメータで表現することが可能になれば、基本動作の組み合わせで人工物の感情の動作を生成できる。これを立証するために、感情モデルをもとに動作生成を行うプロトタイプとして、ポット型のロボットを新たに開発を始めている。 また、モーションデータの編集を行うモーションエディタおよび、スマートフォンのセンサで観客の行動をサーバに集めるシステムの基本機能が完成している。 なお、これらの成果は、H27年度のFIT2015などの関連分野の研究会等で報告する予定である。
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