研究課題/領域番号 |
23611054
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田村 繁治 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (70357490)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 光スペクトル / 色覚バリアフリー / 照明空間 / 色覚障害 / バリアフリー照明 |
研究概要 |
人間は外部情報の8割を視覚で得ており、日本人の300万人が色覚障害者であることを鑑み、安全・安心な社会生活を営む上で必要な正しい色情報を認識することを可能とするための(一般色覚者と同じ配色パターンを認識・共有)色覚バリアフリー照明のスペクトルの開発を行い、公開することを目的として以下の結果を得た。被験実験は行わず、機器の利用、シミュレーションで遂行することを特徴とする。 (1) LEDのスペクトルを基礎として、スペクトルを合成し、シミュレーションを行った。何通りかのスペクトルについて調べた結果、赤色LEDとして波長635 nm、青色LEDとして波長465 nm、および白色LEDの組み合わせが、適当であり、また、販売もされていることから、実用的であると判断した。白色LEDと赤色LEDとの組み合わせにより、障害者が一般色覚者と同じ配色パターンを良好に認識・共有できる、青色LEDを加えることも有効である、との結果が得られた。 (2)WEB上で最近に無料公開されたソフトウェア「色のシミュレータ」と上記の波長のLEDを備えた既存(保有)の照明装置を利用して石原式色覚検査表(特に文字『8』)について15種類の照明パターンについてバリアフリー照明としての有効性を調べた結果、白色LEDと赤色LEDとの組み合わせは有効であることを確認した。また、被験実験は行わず、判別の難易度を数値で定量的に評価する手法を考案した。白色LEDと赤色LEDとの組み合わせは、従来知られていた「蛍光灯、赤色LED、青色LED」と同程度の効果があり、省エネに大いに貢献し、実用的であることが判った。従来、理論的に効果が無いとされていた緑色LEDも、配色パターンによっては有効であることも見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)製品化されている既存のLEDのスペクトルを合成・生成して、種々の照明光についてバリアフリー照明として適するか否かの検討をシミュレーションによって幾通りか提示できた。それに加えて、当該年度は既存のスペクトルを利用したので、シミュレーションのみならず、「色のシミュレータ」と保有する照明装置を利用して、有効性を実験的に実証することができた。さらに、従来は被験実験しか評価方法が無かったが、数値で評価する定量的評価の1手法も提案した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、照明光のスペクトル設計・バリアフリー照明の高度化を図り、観察対象を、3種類以上の色を利用する配色パターンとする。また、保有する既存の照明装置を利用して、公共空間を想定した照明空間の設計・検討を行う。加えて、学会発表での聴講者からのコメントに基づき、光の波長の空間スペクトルデータの取得も行うことで、シミュレーションで利用するスペクトルの妥当性を検証し、高度化を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の「遂行方策」に記した研究の遂行のため、スペクトル測定装置の購入、学会発表のための出張費および参加費、論文発表のための英文添削を中心として予算を使用する計画である。
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