研究課題/領域番号 |
23611054
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田村 繁治 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (70357490)
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キーワード | 色覚障害 / 色覚バリアフリー / 照明スペクトル / 色覚バリアフリー照明 |
研究概要 |
目標:人間は外部情報の8割を視覚で得ており、日本人の300万人が色覚障害者であることを鑑み、安全・安心な社会生活を営む上で必要な正しい色情報を認識することを可能とするための(健常者と同じ配色パターンを認識・共有)ツールとして色覚バリアフリー照明のスペクトルの開発を行う。被験者実験は行わず、機器の利用、シミュレーションで遂行することを特徴とする。 結果:(1) 3種類のLED(白色:日常空間を想定、赤色:波長635 nm、青色:波長465 nm)が組み込まれている照明パネルにおいて、白色光の照度が一定の条件下で 赤色、青色LEDの照度を種々選び、一般色覚者が色覚障害者(II型)の見え方を調べた。その結果、「色のシミュレータ」(浅田一憲氏がWEB上で無料配布)。石原色覚検査表(国際版38表)での正答率は、最高で80%であった。(2)パネルD-15テストのWEB版を作成し、Vischeck(WEB上で公開)でシミュレーションし、色覚障害者(II型)の見え方を調べた結果、連続的に色相が変化するようにチップを並べる方式のテストに対しても「誤り、欠落」が無く、今回提案した色覚バリアフリー照明は有効であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、専用の光学実験台を試作すると共に、分光スペクトル測定器を購入し、実験の高度化を行った。 製品化されている既存のLEDのスペクトルを合成・生成することで、石原式検査式表(国際版38表)をシミュレータを介して観察した場合に、スペクトルが最も最適な場合に80%の正答率が得られた。これは、前年度(2011)に見出したスペクトルでの正答率50%を大幅に上回る数値である。 また、目標として、3種類以上の色を利用する配色パターンを対象にする旨を掲げたが、パネルD-15テストのWEB版を作成し、Vischeck(WEB上で公開)でシミュレーションし、色覚障害者(II型)の見え方を調べた結果、連続的に色相が変化するように15個のチップを並べる方式のテストに対しても「誤り、欠落」が無く、今回提案した色覚バリアフリー照明は有効であった。すなわち、前年度の色覚検査表と比較して、色覚障害者が判別しにくい配色パターンの設計が可能となり、このような場合にも有効な色覚バリアフリー照明光のスペクトルを探索することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
3種類以上の色を利用する配色パターンに対して有効なバリアフリー照明を開発する、との目標は既に達成できた。実際には、15種類の微妙な色の変化を識別することに成功した。 前年度(2012)に使用したLEDは白色:日常空間を想定、赤色:波長635 nm、青色:波長465 nmの3種類であった。前年度に達成した石原式検査式表での正答率(80%)を更に向上させ、100%に限りなく近づけるために、現行の波長のLEDに加え、別の波長のLEDを付加し、試行錯誤に最適な色覚バリアフリースペクトルの探索を行う。 評価の手段としては、石原式検査式表(国際版38表)、パネルD-15テストのWEB版に加え、市販のパネルD-15テストについても試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
パネルD-15テスト、光学実験台用部品を購入する。 成果の発表、情報の収集のために複数の国内学会(色彩学会全国大会、照明学会全国大会大会、色彩学会主催の色覚関連の研究会)へ出張する。 成果を海外へ発信するために、英文論文執筆のための英文校正(翻訳では無く、校正、リライト)を翻訳業者に外注を行う。 以上の方針に基づいて研究費を使用する計画である。
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